日本のヒップホップ・シーンの重要人物、DABO(ダボ)が5thオリジナル・アルバムをドロップしました!!2010年にクラブ・ヒットを記録した「デッパツ進行」、Dragon AshのKjを迎えた感謝のうた「AZS」ほかを収録。トータル・プロデューサーとして彼の盟友、DJ HAZIMEが参加しています! (C)RS
JMD(2010/10/28)
その後順次ポピュラリティーを得ていくことになるAnarchy、サイプレス上野、COMA-CHI、SIMON、SEEDAの5人がマイクを回した“THE NEXT ~未来は暗くない~”(2007年)でホスト役を務めていたことが象徴的なように、ここ数年のDABOは日本語ラップ界の<兄貴分>という役割を自覚的に引き受けてきたように思う。そして、かの“Tokyo Shit”やRHYMESTERの“ONCE AGAIN REMIX”のように世代を跨ぐ格好で求心力を蓄えてきた彼が、今度はそのタメを遠心力に変えて<世間>に向き合ったのが、今回の『HI-FIVE』ということになるのだろう。コンピ的な『DABO Presents B.M.W.』やベスト盤、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの諸作もあったから間が空いた気はしないが、オリジナル・アルバムは『THE FORCE』以来4年ぶりだ。で、作品の柱となるのは、今年の日本語ラップを代表するフロア・ヒットとなったクランキンなバンガー“デッパツ進行”に代表される、いろいろな意味で<わかりやすさ><伝わりやすさ>を優先したと思しき楽曲群だ。同曲を仕掛けたDJ HAZIMEをアルバム全体の監督に据え、かの“Grateful Days”と同じく<感謝>をテーマにした“AZS”でDragon AshのKjをフックに迎えていたり、紋切り型のヒップホップ観に対峙すべく普遍的なテーマ選びや言葉遣いに腐心した痕跡はそこここに窺える。ただ、個人的にグッときたのはサーヴィス精神の裏にあるこだわりの部分で、パースエイダーズ使いでジェイ・Zを意識したようなラヴソング“Love and Hate(ニコイチ)”もいいし、HAZIMEのコスリでSUIKEN(かっこいい)とK-BOMBをもてなしたCHANNEL5の結集曲“Sweet 90's Blues(後方確認)”は流石の素晴らしさ。世間への目配せもファンへのサーヴィスも忘れてないぜ、ってことです。
bounce (C)出嶌孝次
タワーレコード(vol.326(2010年10月25日発行号)掲載)
まるで高く飛び上がった雲の上、いや、宇宙の彼方から下界を悠然と見渡しているようなアルバムだ。もともとDABOは自身の世代をレプリゼントするような言葉を驚くほど意外な目線から軽やかかつスマートに切り取ることに長けたリリシストだが、ニュー・アルバム『HI-FIVE』ではそこにいくらかのファンタジーを感じ取ることもできる。例えば冒頭の“カタパルト・デッキ”。カタパルトとは<投石機>を意味する武器名だが、ここで彼はガンダム世代らしい無邪気さでカジュアルにイメージを創出している。また「星の王子さま」の作者の名前と作品名をそのままタイトルに冠した2曲目の“サンテグジュペリ(夜間飛行)”も広く開かれた世界を求めるような意識がしっかりと落とされたグッド・リリックだ。確かに、チャラい表現も多い。それもまたこの人の魅力ではある。だが、こうした<世界上空いらっしゃいませ>的な包容力を携えた歌詞から見えてくるのは、いまこそあらゆる事象に対してリベラルであろうとするDABOなりのオープンなスタンスだ。90年代を振り返ったような歌詞もあるし、KjやRYO the SKYWALKERら参加ゲストの顔ぶれ、ちょっと懐かしいリフも見え隠れするトラックなどからは、ジャンル、人脈、時間軸に対してもフラットに向き合っている様子が窺える。クラスタ化を解消しようとする彼の、人としての大らかさを痛感させられる力作だ。
bounce (C)岡村詩野
タワーレコード(vol.326(2010年10月25日発行号)掲載)