美メロ、抒情派、エンリコ・ピエラヌンツィの2010年作は、何と!ラテン・プロジェクト。ピエラヌンツィがラテンとは、従来、端から端まで聴いてきたファンの方からは想像がつかないものかもしれません。しかし、その内容は“やはり、ピエラヌンツィ”です。その心とは、どんな音楽も自分のものにして表現するということ。ドラムには絶好調のアントニオ・サンチェス、ベースには超絶プレイヤーのジョン・パティトゥッチ。MCの後は、2人のリズムがプッシュしまくり、フロントの2人も飛ばしまくりで、ピエラヌンツィはというといつもの鮮烈なフレージングを強靭に、しかし最高にしなやかに決めてきます。テーマには、多分にラテンのリズムも入れつつ、ソロ部分はアグレッシブなジャズが炸裂。こんなに激しく弾くピエラヌンツィというのは、他ではなかなか聴くことができませんから、それだけで貴重です。また、いつもの様なピエラヌンツィの演奏が聴きたい方にもオススメな、湯本作で唯一のピアノ・トリオによるM4。イントロから心の琴線を自然に揺らす美メロの世界、ピエラヌンツィ流儀にそった大人な演奏を聴かせるパティトウッチの演奏も乙で、レア・メンバーによる好トリオ演奏を展開します。その演奏を挟んだ後半も至極快調で、テンポが良い中にも、よりピエラヌンツィのピアノ・フレーズがキラリと光る演奏の数々。ラストはアップテンポで5人飛ばしまくるも、ドラマティックに盛り上がり、ラストはピエラヌンツィのピアノの世界をキッチリ入れ込んで幕引きする所も憎いです。NYバードランドでのライヴ録音。ピエラヌンツィが、イタリアにいても、NYにいても、どこにいても、誰と演奏しても、自分の演奏で表現できるアーティストであることを、本作が証明しています。
キングインターナショナル
発売・販売元 提供資料(2010/09/28)
イタリアン・ジャズの巨匠ピエラヌンツィの新作はNY遠征ライブ盤にして、新世代ラティーノ達との共演盤。キューバ生まれのヨスバニー・テリー(as)、プエルトリコ生まれのディエゴ・ウルコラ(tp)のツートップに、メキシコ生まれのアントニオ・サンチェス(ds)、そして陰ながら巨匠と若武者を見事にリンクさせる仕事人ジョン・パティトゥッチィ(b)らが参加。途中トリオ曲も挟みつつも、いつになくエネルギッシュにスリリングなプレイで応戦する巨匠の姿が実に新鮮。
intoxicate (C)稲田利之
タワーレコード(vol.88(2010年10月10日発行号)掲載)