この映画「ロック誕生」は、ニュー・ロック時代から数年間、日本にロックが定着し始める70年代前半のライブ映像を集め、関係者の証言とともにまとめたものである。こういった映像はなかなか発掘されなかっただけに、大変貴重なドキュメントだ。当時から海外でも評価の高かった代表的なニュー・ロック・グループのフラワー・トラヴェリン・バンド。日本のビートルズとも称され、独自の日本語ロックを創ったはっぴいえんど。今も現役で激しく活動し、日本語ロックの始祖である遠藤賢司・・・とにかく動いているシーンが見れるだけでも衝撃的であり、それぞれ飼いならされることのない強烈な個性を放っている。当時を知っている者が懐古趣味で見るだけの作品ではないことは確かである。
ユニバーサル
発売・販売元 提供資料(2010/09/10)
2008年に公開された「ロック誕生 The Movement 70's」が、ディレクターズ・カット版としてDVD化。グループ・サウンズが終息した後、先鋭的なミュージシャンたちがそれぞれの<日本のロック>を模索しはじめた、混沌と創生の時代である70年代前半の音楽シーンを、約7割が未発表という発掘ライヴ映像と関係者たちのインタヴューで炙り出した、迫真のドキュメンタリーだ。ライヴに関しては、単体での映像は恐らく初出となるはずのはっぴいえんどを筆頭に、近田春夫率いるハルヲフォンのファンキーなステージ、コズミックなプログレが異色のFar East Family Band、さらにフラワー・トラヴェリン・バンド、頭脳警察、クリエイション、四人囃子など、<思い出のヒット・パレード>的なTV番組では絶対に観ることができないであろう凄いメンツの貴重な映像が目白押しで、それらの逸品がまとまって収録されていることだけでも本作の価値は十分にある。またインタヴューも実に興味深い。プロモーター的視点から新たなロック・ビジネスの可能性を探り、現状を打破しようと躍起になっていた内田裕也やミッキー・カーチス、当時のリスナーのロックに対する誤解や無理解を嘆く遠藤賢司や近田春夫、破天荒な武勇伝を披露する外道の加納秀人―混迷の時代をサヴァイヴし、いまも現役の面々が語る逸話は、当事者ゆえの洞察と説得力に溢れていて生々しい。日本のロックが市民権を得てゆく過程に、こんなスリルとハッタリと冒険心に満ちた開拓時代があったことを再認識させられる、骨太な傑作。
bounce (C)北爪啓之
タワーレコード(vol.327(2010年11月25日発行号)掲載)