リヴィング・レジェンド、プリンスによる、3枚組の超大作となった前作『Lotusflow3r』から約1年という短いスパンで完成させたオリジナル・アルバム。ヨーロッパでは新聞の付録として無料配布されるということで話題となった今作、殿下曰く「ニューウェーヴ的な要素も散りばめられたストロング・ファンク」とのことで、“あの頃”のサウンドに回帰したとの評判。
発売・販売元 提供資料(2010/07/12)
ブリア・ヴァレンティのデビュー・アルバムをセットにした変則仕様の3枚組、『Lotusflow3r/MPLSound/Elixir』から約1年を経ての新作『20Ten』。ヨーロッパでは2007年の『Planet Earth』に続いて新聞/雑誌(英The Daily Mirror紙、独Rolling Stone誌、仏Courrier International誌など)の付録としての無料配布を敢行、しかもその他のエリアでのリリースは現状未定(古巣ワーナー・ブラザーズと交渉を進めているとの噂もある)ということで、われわれ日本のファンにとってはちょっと厄介なリリース形態になっているけれど、センセーショナルに報じられた例の<インターネットは終わった>発言と、それに伴うオフィシャル・ウェブサイトの閉鎖なども含め、ここ最近のこのお騒がせぶりはすべて殿下好調の証と受け止めている。それは、こうした短いスパンでのアルバム・リリースにしても然り。 そこにきて、<『Purple Rain』や『1999』を彷彿とさせるサウンド><『Sign O' The Times>以降では最高の出来>と評したThe Daily Mirror紙の先行レヴューが出てきた時にはかなり興奮させられたが、それに賛同するかどうかはともかくとして、確かにそんなことを言ってみたくなる内容ではある。“Let's Pretend We're Married”~“Let's Go Crazy”~“Can't Stop This Feeling I Got”の流れを汲むオープニング・トラックの“Compassion”以下、“Beginning Endlessly”“Act Of God”“Lavaux”“Everybody Loves Me”といったポップ・ファンクの肝になっているチープでキラキラしたシンセ音は、間違いなく80年代の<あの頃>のそれ。アルバムの音楽的なトーンを「ストロングなファンクとニューウェイヴのエレメンツの融合」と形容していた殿下のコメントにも合点がいく。 そのほか、一転してシンプルでストイックなクール・ファンクを展開する“Sticky Like Glue”も良いアクセントになっているし、もろに“Do Me, Baby”を想起させる“Future Soul Song”など3曲あるバラードも充実。まあ、圧倒的な完成度に打ち震えるようなタイプの作品ではないかもしれないが、全10曲計40分(77曲目に登場するシークレット・トラック込み)というコンパクトさも含めたトータルでの<軽み>がなんとも心地良く、おのずと耐久性も高そう。あとはライヴでも映えそうなこのあたりの曲を実際に生で楽しむ機会に恵まれたら言うことないんだけどな。
bounce (C)高橋芳朗
タワーレコード(vol.324(2010年8月25日発行号)掲載)