現代アルゼンチン・フォルクローレを代表する女性シンガーで、真っ先に名前が挙がるのがリリアナ・エレーロであろう。しかし、昨今の日本で評価される、いわゆるネオ・フォルクローレ・シーンにおいては本作の主役シルヴィア・イリオンドも、リリアーナと同等にその存在が重要視されている。これまでに彼女の作品にはカルロス・アギーレ、ファン・キンテーロ、キケ・シネシ、リリアン・サバ、ジェイミ・ルース、マリオ・グッソ、セバスチャン・マッチ、マルコス・カベサス、ホルヘ・ファンデルモーレなど、シーンのキーマンがこぞって参加。2003年作『TIERRA QUE ANDA』ではかのエグベルト・ジスモンチがプロデュース。のちに彼のレーベル“CARMO”からもリリースされるなど、非常に高い評価を得てきた逸材。そのシルヴィアが4年振りに発表した本作は、1973年に発表されたフォルクローレ史に残る名作『MUJERES ARGENTINAS(アルヘンティーナの女達)』をカヴァーするというもの。当時このアルバムを綴ったのは、巨星メルセデス・ソーサ、作曲家/ピアニストのアリエル・ラミレス、詩人フェリックス・ルナという3人。そのうちの2人、メルセデスとアリエルが2009年から立て続けに亡くなったことが、彼女にこのアルバムを制作させた言われている。アルゼンチン史上の8人の女性(7人のアルゼンチン人と1人のボリビア人)を歌ったテーマは、当時メルセデス・ソーサにとっても出世作となった。その金字塔を丸々カバーするという壮大なコンセプトに、シルヴィアは果敢に挑む。フォルクローレに根差しながらも、どこか現代音楽的な響きとシンクロするのが彼女の歌声の特徴。大地の香りを感じさせ、高く飛翔するかのような開放感で聴く者の心を深い世界まで誘うナチュラルな音像を、シルヴィアの声、そしてシーンの中心で先鋭的な活動を続ける気鋭のミュージシャンが共に創り上げている。ネオ・フォルクローレの申し子ともいえるシルヴィアの歌唱。彼女が描くアルゼンチン・フォルクローレの新たな未来図から目を離せない。
発売・販売元 提供資料(2010/08/31)