また、ティチィアンの季節がやってきた。初夏のかおりを漂わせ木漏れ陽そそぐテラスの休息を吹き抜ける心地よい風、そんな午後のひと時に聴くピアノ、ティチィアンはずっとそばにいる。澤野では4作目となる『We will meet again』。ただ前回まで一緒だったドラムスのクラウス・ヴァイスはもういない。ベースのトーマスが、クラウスの代わりは彼しかいないと引っ張ってきたのがヴォルフガング・ハフナーだ。その特徴のあるシンバルレガートでこの新生トリオを盛り上げる。これまでスタンダード、ボッサと、たくさんの楽曲を何色ものパステルカラーで色付け、その個性を確実なものにしたティチィアン、頼るべき師のクラウスは胸の奥底へ。これからは自らがヘッドにならなくてはいけない。そんな決意の表れが今回の『We will meet again』だ。ピアノ好きの方であれば、これらのアルバム収録曲をご覧になれば納得いくはず。これは澤野側のプロデュースの賜物であろう。実に感慨深いラインアップだ。これら極上の素材であるミュージシャンズ・ナンバーをどの様なスパイスの組み合わせで味付けするのか、ティチィアンの仕上げに興味はつきない。さっぱりとソルトのみで味付けされたジョーダン作のM1ではじまり、ケリーのM2では甘苦いシナモンといった感じだ。ロレイン・ゲラー作のM6、シダー・ウォルトンのM7、これらのアプローチには頭がさがる。アルバム全体をひきしめるオールスパイスだ。タイトル曲であるエバンス作M8ではトーマスのベースがローズマリー的役目をはたす。ラス・フリーマンのM10、これには正直しびれた。まさに王道ブラック・ペッパーといったところだ。ラストを飾るM13のまったり感は…、とにかく何度も食して欲しい。彼の器用さを十分味わえる最高の仕上がりだ。最後はあなたの好みの聴き方でスパイスをブレンドしたらいい。次回はコンポーザーとして彼のオリジナルを是非聴きたいものだ。Text by 足立 豪樹(ライナーノーツより)
澤野工房
発売・販売元 提供資料(2010/04/28)