声優、歌手として活動する坂本真綾の1997年4月にリリースしたファースト・アルバム。 全作曲/プロデュースを菅野よう子が手がけた作品。 (C)RS
JMD(2010/06/14)
坂本真綾『グレープフルーツ』(1997年4月23日)
それまで、多くの海外映画・ドラマの少女の吹き替えを行っていた“声優”の16歳の少女、坂本真綾は、大作アニメ・シリーズ『天空のエスカフローネ』の主役に抜擢され、そのオープニング・テーマの「約束はいらない」を歌ったのち、このアニメの音楽担当であった菅野よう子のプロデュースで、後半が「エスカフローネ」イメージアルバムの性格ももつ、このファースト・アルバムを発表することとなった。サウンドを聴きなおして、心地よいのは、そう、このサウンドは完全に“シブヤ系のその後としてのアニソン”を正確に表した1枚なのだ。それは菅野録音の多くにこの後も参加している、“オリジナル・ラヴ”を通過したミュージシャンたちの演奏に代表される、良質のポップス・サウンドに徹した録音の中での菅野の遊びと、(この当時は)つたないが真摯な真綾の歌声は、少しずつ離れていて、そのミスマッチさこそが、その後のアニソンの心地よさを予言していたのかもしれない。まさしく完璧に完成された神々しいポップス「約束はいらない」の中のちょっと恥ずかしい、鐘の音は、菅野よう子だからこそできたワザだ。そして、この瑞々しい1枚のアルバムから、坂本真綾の壮大な旅は始まっていくのだ。 (C)馬場敏裕
タワーレコード(2010/03/24)