今や名実ともに全米No.1ラッパー=リル・ウェインが、ロックに向かってまたも境界をクロス、更にパワー・アップしたアルバムをリリース!全米チャートを湧かせた「プロム・クイーン feat.SNL」「ドロップ・ザ・ワールド feat.エミネム」他を収録。 (C)RS
JMD(2010/06/14)
USのみで300万枚以上のセールスを叩き出し、2008年最強のラップ・アルバムとしてグラミー賞も獲得したモンスター・アルバム『Tha Carter III』に続くアルバムは、何と!?ロック・アルバム。自身のレーベル名でもありグループ名でもある“ヤング・マネー”クルー他豪華ゲスト陣を招き、ギターを手にしたリル・ウェインは今作で、チャレンジ精神を決して忘れない現役最強ラッパーであることだけでなく、ヒップホップ・シーンのみならず停滞する音楽業界に旋風を巻き起こす。
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タワーレコード
何度も延期を重ねてやっと登場したリル・ウェインのロック・アルバム『Rebirth』。そもそもはヒップホップ界の〈ロックスター〉ムーヴメントを前提にして始まったはずだが、その端緒とも言える“Playing With Fire”を収めた前作『Tha Carter III』後のツアーでギターを修得し、ケヴィン・ルドルフの“Let It Rock”を大ヒットさせ、いよいよ2009年1月に“Prom Queen”を出して……とかやってるうちに、いわゆるブームは去ってしまった。しかも、その間にはミックステープの『No Ceilings』や別掲のヤング・マネー作品で新たなモードも打ち出しているわけで、それでもきちんと出してきたこと自体が凄いと思う。
基本はバタついたドラムスにギターが這い回るラップ・チューンが中心で、これはジミヘン~Pファンクの系譜に並べたい。イガイガの加工ヴォイスにジョージ・クリントンの変態ヨレヨレ唱法を連想する人も多いだろう。一方で、エミネムの鋭いフロウも交えた“Drop The World”、ディケイダンス組との交流を反映したパンキッシュな“Get A Life”、ニッキ・ミナージを従えた開放的な“Knockout”、ルドルフによる大袈裟なスタジアム・チューン“Paradice”などでは80年代っぽい劇的なポップネスを纏いつつイレギュラーなガラガラ歌唱で押しまくり、このアホすぎるズルムケな格好良さはロック好きにも無条件で刺さると思う。全力で支持したい気楽な快作だ。
bounce (C)出嶌孝次
タワーレコード(vol.318(2010年2月25日発行号)掲載)