フランスを代表する女優、シャルロット・ゲンズブールの2006年リリース『5:55』に続く、約3年ぶりとなるアルバム。ベックが全曲書き下ろし、プロデュースも手掛けた作品で、ファースト・シングルとなるベックとのデュエット曲「ヘヴン・キャン・ウェイト」他を収録。 (C)RS
JMD(2010/06/14)
フランスを代表する大女優シャルロット・ゲンズブール。2006年リリースの『5:55』に続く、約3年振りとなるアルバム。本作はベックが全曲書き下ろし、プロデュースも手掛けたLA録音。シャルロットからご指名を受け、プロデュースを担当したベック。スタジオで作業を始めるや否や二人は意気投合、最初はアルバムのプロデュースとミキシングのみ手掛ける予定だったが、最終的には全曲をベックが書き、歌詞もシャルロットと共同で手掛けている。ベックにとって、他のアーティストの作品にここまで深く関わるのは初めてとのこと。他に、ドラムはジョーイ・ワロンカーとジェームズ・ギャドソン、キーボードにブライアン・ルバートン、トランペットにデヴィッド・ラリック、ストリングスのアレンジにベックの父親デヴィッド・キャンベルが参加している。ベックとのデュエット曲「Heaven Can Wait」も収録。「ヘヴン・キャン・ウェイト」のPVを収録した、CDエクストラ仕様。
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タワーレコード
フランスを代表する女優が音楽家として通算3作目となるアルバムを完成させた。今作はあのベックが全面バックアップ。父セルジュからの音楽的影響を公言してきた彼だけに、これはある意味恩返しでもあるのだろう。プロデュースのほか、全ての作曲、歌詞の共作にデュエットまでと、八面六臂の大活躍を見せている。硬質なバンド演奏とエレクトロニクスが織り成す近年のベックらしいインダストリアル調のサウンドをバックに、巧みに陰影を効かせたシャルロットのウィスパー・ヴォイスが何とも妖艶な存在感を放っており、最高に格好いい。
intoxicate (C)田中幹也
タワーレコード(vol.84(2010年2月20日発行号)掲載)
前作でナイジェル・ゴッドリッチとコラボしたことにも驚いたが、3年ぶりの新作に彼女が選んだ相棒はベック! 父セルジュの大ファンだけあって文句ナシの適役だが、あえて〈俺流〉を貫いたのが見事に吉と出た。ジェイムズ・ギャドソンの強靭なビートがうねるファンク、鍵盤奏者のブライアン・ルバートンらベック作品の常連によるアメリカン・ルーツ音楽にエレクトロニクスを溶かしたポップな楽曲は、ダークだった前作とは好対照。何より彼らしいキッチュさが主役の深遠なウィスパー・ヴォイスから躍動感を引き出しており、こんなに表情豊かな歌手だったのかと惚れ直してしまった。カンヌ映画祭の女優賞を受賞してノリまくっている時期に、音楽面でも稀代の職人と出会えた彼女の喜びが素直に伝わる傑作だ。
bounce (C)岡本大輔
タワーレコード(vol.317(2009年12月25日発行号)掲載)