70年代よりアンダーグラウンド・シーンで活躍してきた卓越したマルチ奏者であり、陶芸家としても知られる鬼才工藤冬里を中心とする不定形ユニット、マヘル・シャラル・ハシュ・バズ。"ザ・マスター・オブ・ミステイク"こと工藤の書くスコアを基に、常に変化する演奏陣による崩壊寸前の揺らめくアンサンブルと美しいメロディとの対比が生み出す、ロック、現代音楽、ジャズ、フォーク、サイケを飲み込んだ唯一無二の音楽。今春の来日ツアーの記憶も新しいキャルヴィン・ジョンソン主宰の"K"より、ロング・セールスを続ける『他の岬』に続いての第2弾リリース。工藤により2005年から7年にかけて作曲された200曲超を、欧州最大規模フェス、ロスキルデ出演も含む2007年ヨーロッパ・ツアー時にシェルブールにて、「初見プロジェクト/sight reading project」スタイルにより日本からの9名プラス現地のミュージシャンとで録音。「ミュージアムに行って一枚一枚絵を見ていくような体験と重ねてもらいたい」というコンセプトにより、均等に曲間を10秒ずつとり、最短数秒、最長でも3分という極端なショートピースを収録。ロック的なざらついた感触が印象的だった前作と比して、ジオグラフィックからの名作『今日のブルース』にも通じる柔らかで暖かい質感と贅沢に断ち切られてゆく童謡のように親しみやすいメロディが全編を貫き、あまりにアヴァンギャルドな構成ながら全体としてはポップという印象すら受ける驚異的な仕上がり。こちらの日本盤は、K盤の2枚組CD177曲に加え、日本盤のみさらに同セッションからのアウトテイク集をボーナス・ディスクとして収録した3枚組仕様。前代未聞の収録曲数!
タワーレコード
前代未聞! 何と177曲(国内盤はボーナスディスク付き200曲!)収録したショートピース集! 70年代より活動する日本のアングラ音楽シーンの生きる伝説、工藤冬里が今回挑むは177曲にも及ぶ〈初見プロジェクト〉。’07年、パリ郊外にて録音された本作は「ミュージアムで1枚1枚絵を見ていく様な体験と重ねてもらいたい」とのコンセプトの基、最短11秒から最長3分という楽曲で構成!今にも崩れそうな危ういバランスにて奏でられる童謡と形容して良い様な優しいメロディーが立ち現われては消えていく。この狙って無い自然な立ち振る舞いが本当に素敵ですね!
intoxicate (C)池田敏弘
タワーレコード(vol.81(2009年08月20日発行号)掲載)