テキサス州のメキシコ色強い街エル・パソ出身2人組が率いるラテン風味プログレ・バンド=ザ・マーズ・ヴォルタの第5弾スタジオ・アルバム。美しくもメローなバラード「シンス・ウィヴ・ビーン・ロング」など収録の、彼らなりの"アコ-スティック作品"。 (C)RS
JMD(2010/06/17)
マーズ・ヴォルタ、約1年半振り待望の5thアルバムが完成!2008年発売の前作『ゴリアテの混乱』では、全米チャート初登場3位を記録!勢いに乗ったまま同年6月の来日公演では、カオスを増大させた究極のライヴで日本のファンを熱狂の渦に巻き込んだ。カオスも静寂も、あらゆるこの世の事象を飲み込んだ、最高傑作がここに誕生!
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タワーレコード
プログレッシヴという言葉は好きだ。マーズ・ヴォルタのサウンドを説明する際にもプログレの話が持ち出されることは多いが、単にロックのそればかりではなく、ジャズでもヒップホップでも、どんなジャンルでも先進性のある姿勢を抱く音楽との出会いには、いつもワクワクする。ファースト・アルバム『De-Loused In The Comatorium』を耳にしたときの驚きは忘れられないが、まだ6年前かと思ってしまうほどコンスタントに作品を送り続ける、創造力に富む彼ら。今回の『Octahedron』がスタジオ・アルバムとしては5枚目となる。オマー・ロドリゲス・ロペスの発言から〈新作はアコースティック・アルバム!?〉という噂もあったが、流石に単純ではないマーズ・ヴォルタのこと、やはりオーガニックな風合いのアルバムでも、アンプラグドな作品でもなかった。ヘヴィーでダイナミックなリズムが醸すエクストリームなパワーに圧倒される一方、アコースティックな要素が幻想的でストレンジな世界観の構築を手伝う曲があったりと、分類こそロックでも、その豊かな表現力に感服しっぱなし。これまでの作品よりも聴きやすい印象はあるものの、1秒でも早く魅力を伝えようと端的でキャッチーな曲が好まれる昨今の音楽事情にあって、彼らのようにアルバム一枚通して聴きたくなるアーティストの存在は嬉しい。カリスマ的な存在であり、ミステリアスでカオティックなサウンドではあるが、少なくとも腕組みして聴く必要はない。
bounce (C)栗原 聰
タワーレコード(vol.311(2009年06月25日発行号)掲載)
マーズ・ヴォルタのニュー・アルバム『Octahedron』が到着した。前作『The Bedlam In Goliath』から約1年半ぶりで、加えて今作のリリースまでにバンドの頭脳=オマー・ロドリゲス・ロペスはソロ作、別名義、コラボ盤などを次々と発表(その数なんと7枚!)。そこではインプロヴィゼーションに重きを置いた彼のフリーキーでエクスペリメンタルな側面を垣間見ることができた。とはいえ、オマーの多作ぶりはここ1〜2年の話ではないし、バンド自体も結成から6年で5枚目なので、タームに関していうとそこまで驚くことでもない。驚くべきは、リリースごとに見せる進化のほう。今回のアルバムは〈アコースティックな作品〉であることを、本人たちも発言から匂わせていた。ただ、それはアンプラグドで作られたという意味ではなく、静寂な雰囲気を強調したという意味だと思う。2作目『Frances The Mute』では〈静〉と〈動〉を交互に行き来することで生まれるドラマティックな趣を、3作目『Amputechture』では中毒性の高いグルーヴを、前作ではそのグルーヴをよりダイナミックに進化させてカオスを生み出していた。で、今回はというと、従来の激しさが減ったぶん、代わりに宇宙的で神秘的な壮大さを表出させている。その深遠な雰囲気ゆえ、ヴォーカル、そしてメロディーがいつになく強調されているようにも感じたり。ただ、ここで見せた変化は今後の方向性を示唆するものではなく、あくまで通過儀礼的なものにすぎないのだろう。常に進化した作品を発表し続けるバンド、マーズ・ヴォルタとはそういうユニットなのだから。
bounce (C)池田義昭
タワーレコード(vol.311(2009年06月25日発行号)掲載)