原題は、『死刑囚は逃げた、あるいは、風は己の望む所に吹く』。
副題は、映画中でも引用される、聖書のヨハネによる福音書第3章8節の、ニコデモに対するイエスの言葉から採られている。
第二次世界大戦中の1943年、ドイツ占領下のリヨン、ゲシュタポによる大量処刑が行なわれたことで有名なモンリュック監獄に捕らわれた対独工作員の青年士官は死刑を宣告され、3階の独房からの脱獄を実行した。
1956年に刊行されたアンドレ・ドゥヴィニの衝撃的な回想記を、ロベール・ブレッソンは、極限状況での緊密なサスペンスを構築するため、史実を大胆に脚色している。崇高な精神性を感じさせる禁欲的な文体は多くの映画作家に影響を与えた。撮影は1956年5月15日から8月2日まで行なわれ、一部は、ドゥヴィニ立会いのもと、実際にモンリュック監獄で撮影された。
ドゥヴィニをモデルとする強靭な意志を持つ主人公のフォンテーヌ中尉に扮すのは、当時学生で、後に映画監督になったフランソワ・ルテリエ。ほかの登場人物も職業俳優ではない人々が扮している。撮影はレオンス=アンリ・ビュレル。美術はピエール・シャルボニエ。主題歌には、モーツァルトの『ミサ曲 ハ短調』が用いられている。
発売・販売元 提供資料(2012/11/02)
第二次対戦中に実際にナチスの捕虜となったことがあるブレッソン監督が死刑囚の実話を元にして映画化。脱獄不可能といわれた監獄から囚人仲間が脱獄を失敗し、処刑されていくなかで主人公にも死刑宣告が下されたことで脱獄を決意すのだが、独房に戻るとそこには謎の少年が収監さていて彼はある決断を迫られることになる。本作からプロの俳優の起用をやめたり、ナレーションと行動を二重化する技法を用いたり、映画的な装飾や挿話を可能な限り排除することによってブレッソン監督の美学がより強固となっている。本作の原題ではすでに脱獄の結末を示しているのも注目すべき点である。2Kレストア版による初BRD化!
intoxicate (C)田口光昭
タワーレコード(vol.159(2022年8月20日発行号)掲載)
第二次世界大戦のさなか、ドイツ軍に囚われて死刑宣告を受けたフランスの青年士官が、3階の独房から決死の脱獄を実行した。本作は、その衝撃の実話をもとにロベール・ブレッソンが描き出した究極のサスペンスだ。主人公ほか、登場人物には職業俳優を使わず、贅肉をそぎ取ったストイックな描写で脱獄のプロセスを追いかけていく。とくに物語の後半、計画が実行に移ってからはセリフも音楽も排除されて、息苦しいような沈黙の中で強烈なスリルが生まれていく。最近流行りのモキュメンタリーなんて蹴散らすリアリズム。これぞ映画の力!
intoxicate (C)村尾泰郎
タワーレコード(vol.79(2009年04月20日発行号)掲載)