さらに成熟した"プリンセス・オブ・ヒップホップ・ソウル"キーシャ・コールが、自身だけでなく人々のリアルを描くサード・アルバム。夭折のラップ・レジェンド=2パックをfeat.、彼への愛惜とリスペクトを込めた「プレイヤ・カーズ・ライト」 は、涙なしには聴けない! (C)RS
JMD(2010/06/14)
メアリー J.ブライジ以降のフィメールR&B/ソウル・シンガーとして抜きん出た実力を披露し、確固たる地位を獲得しつつあるキーシャ・コール。ストレートで赤裸々なリリックを限りなきソウル・ミュージックへの愛情、信念、屈強な精神の宿った“魂”の声で歌い上げる堂々たる“プリンセス・オブ・ヒップホップ・ソウル”のサード・アルバム。ファースト・シングルはあの2パックをフィーチャーした「プレイヤ・カーズ・ライト」!
タワーレコード(2009/04/08)
人気の歌姫が集結したガン撲滅キャンペーン・ソング“Just Stand Up!”の披露ライヴでは、ステージ端で歌っていたキーシャ・コール。対して、真ん中でビヨンセと肩を並べて歌っていたメアリーJ・ブライジ。それを見ると、否応なく〈女王〉との格の違いを意識させられてしまうわけだが、しかし、いまのキーシャが〈いなくてはならない存在〉であることは、客演のオファーが絶えないという事実からもあきらかだろう。デビュー作『The Way It Is』(2005年)のタイトルを冠したTVのリアリティー番組では、オークランドのゲットーから這い上がってきたドラマティックな半生を綴るなどして、お茶の間からの評判も上々。そんな過去にも注目が集まっているキーシャだけに、下積み時代に出会っていた故2パックとの疑似共演曲“Playa Cardz Right”(2006年)の再録音版を先行曲として出したことは意義深いと思えたし、何より前作から1年というハイペースで新作を出してくるあたり、もう絶好調と言うしかない。
『A Different Me』と題して変化を匂わせる新作は、痛みを歌にしてきたこれまでとは違い、前向きに生きていく女性(自分)を謳ったものらしい。が、そう言われなくても、スウィング・ビートに乗ってタイトルを連呼するポロウ・ダ・ドン制作の“Make Me Over”を聴けば、その力強く振り絞るような歌が痛みから感情的になったものとは違うことに気付くだろう。以降、ランナーズ、ロン・フィームスター、タンクらが80年代っぽい音色を使うなどしながらキーシャのエモーションを引き出せば、〈ポスト・メアリー〉感を増幅させるナズとの共演やトラックマスターズの起用もR&Bシンガーとしての彼女をさらなる高みに導く。一方、憧れのモニカとデュエットした“Trust”や蕩けるほどメロウな“Brand New”といったスロウ・バラードではしっとりと歌い上げ、“Love”や“I Remember”で掴んだファンの期待も裏切らない。そんなキーシャの歌を生々しく引き出す後見人ロン・フェアとのタッグも、今回はさらに強化されているように思う。けれど、“Erotic”なんて艶めかしい曲をサラッと歌い上げるキーシャの歌い手としての余裕、今回はこれがいちばんのポイントだ。まさにリアリティー・ショウさながらの目覚ましい成長を見せている彼女は、徐々に女王の座に近付きつつある。
bounce (C)林 剛
タワーレコード(2009年01,02月号掲載 (P84))