ビクトル･エリセ DVD-BOX

■挑戦
ある小さな田舎の村の広場に車が到着する。村には人影がない。車から下りてきたのは男女2人ずつとチンパンジー一頭。男のひとりが「ここはどこだ?」と訊ねると、女のひとりが「月よ」と答える。4人だけの「共和国」の中で、うつろいゆく愛と幻滅…。([第3章]ビクトル・エリセ篇)

■ミツバチのささやき
むかしむかしの1940年頃。スペイン中部のカスティーリャ高原の小さな村に、移動巡回映写のトラックが入っていく。上映されたのは『フランケンシュタイン』。村人と一緒に息をつめて映画に見いっている幼いアナと姉のイザベル。スクリーンの中で起こる少女の殺害。アナは姉にきく。なぜ殺したの?姉はあとで、フランケンシュタインは怪物ではなくて精霊なのだと、秘密を教える…。

■エル・スール
歴史的にスペインからの分離独立の動きがたえない＜北＞のバスク。祖父と対立して、＜南＞に帰ることを拒み、＜北＞の''かもめの家''に住み着いた父アグスティン。アグスティンがこだわろうとする内戦の＜過去＞を拒む母と、かつての恋人ラウラ。父はもう帰ってこないと15歳の少女エストレリャが予感する1957年の秋から幕が開き、エストレリャの内心の回想の声で、7歳から8歳になった頃の＜北＞の''かもめの家''での生活が語られていく。

永遠の傑作「ミツバチのささやき」「エル・スール」、ニュープリントによるニューマスターにて、決定版DVD化。そして、日本初登場の「挑戦」――。すべての映画ファン必携の「ビクトル・エリセDVD-BOX」、遂に発売!

■挑戦
エリセ監督の映画デビュー作、日本初ソフト化にして、当DVDにて日本初公開。アメリカ人とスペイン人の相克を主題にした、三篇からなるオムニバス映画。
『ミツバチのささやき』『エル・スール』を手がける製作者エリアス・ケレヘタが、＜アメリカ人の生活＞と＜暴力＞という2つの要素に重点を置いたオムニバス映画を企画。国立映画学校の生徒として抜きん出ていた3人、クラウディオ・ゲリン、ホセ・ルイス・エヘア、ビクトル・エリセを監督に起用した。映画は3人の個性があらわれ、最終的には＜4人の登場人物＞、＜閉じた状況設定＞、＜最終的な暴力の発露＞、の枠を持った独自の映画になり、特にエリセ監督作品は、すでに監督の力量が発揮された、味わいのある作品となった。

■ミツバチのささやき
「ソイ、アナ・・・・・・私はアナよ。」巡回映写の映画で見た「フランケンシュタイン」を精霊と信じたアナは、精霊が住んでいるという村はずれの廃屋に、惹きつけられていく・・・。
『ミツバチのささやき』はビクトル・エリセ監督の長編第1作。撮影はフランコ時代の1973年に行われた。純粋なまでに簡潔で繊細な美しさにみちた映像と音、そして説明的部分をぎりぎりまで排除した映画ならではの魅力に溢れた語り口……同年の世界各国の映画祭での圧倒的な絶賛が、映画『ミツバチのささやき』と監督エリセに、そして天才的な少女、アナ・トレントに惜しみなくおくられた。

■エル・スール
その朝、エストレリャの枕の下に、父の振り子がしのばされていた。内戦の記憶、父の過去。北の''かもめの家''に届く、スール -南- からの誘い・・・。
第1作『ミツバチのささやき』から10年を経て1983年に発売された長編第2作。原作はアデライダ・ガルシア=モラレスの短編小説で、85年5月にスペインで出版された。父アグスティンを演じるのは名優オメロ・アントヌッティ。幼いエストレリャを演じるソンソレス・アラングーレンと15歳のエストレリャを演じるイシアル・ボリャンはふたりとも本作で映画初主演を果たした。

なんで発延か？と訝しがっていたらエリセ自身がこっそり監修をしていたためとの情報が！ しかしこりゃ凄いボックスセットである。かつて映画館ではその美しさにドギモを抜かれつつもその後のDVDでは真価伝わらずの『ミツバチのささやき』と『エル・スール』のリマスター版、さらにデビュー作『挑戦』（日本未公開）が入ってる上にこれでもかの『ミツバチ〜』公開25年後ドキュメンタリーも収録ときた日には開いた口が塞がらない、塞ぎたくない。これで『マルメロの陽光』も入っていれば特大花丸だったのだがまあ贅沢は言うまい。平成日本には過ぎた贈物と言う他ないね。
intoxicate (C)藤原聡