ツェムリンスキーの代表作「叙情情交響曲」をマゼールが録音した名盤が復活！
　1994年に国内盤で再発されるもすぐに廃盤となっており、今回は実に14年振りの復活CD化（輸入盤でも久しく廃盤のまま）。当盤の最大の強みは何と言ってもマゼールとベルリン・フィルの作り出す引き締まった響きと圧倒的な力感。その上精緻さとしなやかさでも群を抜いており、その表現の幅の広さは驚嘆に値する。この両者でなければ成し得ない驚異的なレヴェルである。演奏の方向性としては、マーラーにその多くを負いつつも新ウィーン楽派と密接な関係にある当曲の新しさに聴き手の注意を向けさせる演奏と言い得るもので、この曲に特徴的な新しい響きが実によく分る。その意味で後発のシャイー＆コンセルトヘボウやシノーポリ＆ウィーン・フィルなどのロマンティックな演奏とは対照的。そしてマゼール盤で忘れてはならないのがフィッシャー=ディースカウのソロ。ここでもいつもながらの雄弁さで、その語り口の巧さは余人の及ぶ所ではない。人によっては詩を分節化しすぎるとの意見もあるだろうが、この「非=ロマンティック」な歌唱はマゼールの解釈の方向性と完全に一致している。この説得力は好き嫌いを超える。そのフィッシャー=ディースカウの薫陶を受けたであろうヴァラディ（周知だろうが細君である）も見事。叙情交響曲で1枚だけ選ぶのなら当盤が最右翼であるのは間違いなかろう。（新宿店 藤原）

タワーレコード （2009/04/08）