現在活動休止中のスキャフル・キングの中心メンバーの3人が顔を揃えたFRONTIER BACKYARD。数多のライヴをこなして出来上がったサード・アルバムは、アグレッシヴなROCK!PUNK!FUNK!序盤の90年代を彷彿とさせるようなレッチリ的シンガロングミクスチャーに始まり、中盤ではこれまでのFBYの十八番な最新のシンセエレクトロの打ち込みハウスも登場。そして、終盤でみせる80年代後半のMADNESS的なマイナーでどこか切ないメロディー、最後は独自のPOPセンスを爆発させる今のライヴを象徴する激しい楽曲で締めくくる。全11曲を駆け巡る疾走感ある内容となっております!
タワーレコード(2009/04/08)
すべては『Rock The Boomy Style』というアルバム・タイトルが物語っている。FRONTIER BACKYARDはこれまでの作品でエレクトロニクスと生音を駆使しながらさまざまな音楽ジャンルを呑み込んできたわけだけど、今回はそのなかでもとことん〈ロック〉を感じられるアルバムになっている。前作『BASIS』のリリース以降、昨年はSCAFULL KINGの一時復活が実現。〈フジロック〉への出演や全国ツアーを回り、その傍らでTGMXはItscoや依布サラサといった女性シンガーをプロデュースするという新たな展開も見せた。そんな数々の刺激を得て取り掛かった新作は、これまでの基本路線であるシンセや打ち込みを多用した、眩いばかりにポップなミクスチャー・サウンドが中心だけれど、そこにはロックの肉体性がよりいっそう漲っている。例えば“Fake us”のギターはすっかりハード・ロック/メタル仕様だし、“EVER GREEN”はかつて“Walkie Talkie Man”でステリオグラムが世界中のキッズを踊らせたあのリフを無邪気に引用した、まさに〈boomy style〉のダンサブルなナンバー、“You feel the luck”はまるで〈FRONTIER BACKYARDの仮面を被ったSCAFULL KING〉みたいな印象だ。さらにリスナーの魂を揺さぶり、情熱を刺激するような全編をとおしてのグルーヴ感は過去2作を超えている。これがSCAFULL KINGの活動によって蘇った感覚によるものとは断言できないが、その時に得た久々の快感がここに宿っているような気がしてならないのだ。とにかく最高!
bounce (C)加藤 直子
タワーレコード(2008年09月号掲載 (P62))
ソウルやフュージョンの豊かなグルーヴも、打ち込みのビートも、ロックの大きな懐に放り込んでいく――2000年代的なミクスチャー感覚をいち早く身に纏い、後発のバンドたちを牽引してきたFRONTIER BACKYARDは、その雑食的センスゆえに最新の音を貪欲に取り込む〈なんでもアリ〉なバンドと思われがちかもしれない。だが彼らの奏でる音を注意深く聴けば、そういった無節操な態度とは無縁であり、その活動はむしろ明確なスタイルに貫かれていることがわかるはずだ。例えば、彼らのサウンドを特徴付ける輪郭のくっきりしたシンセ・ベースは、ダーティーなエレクトロにも、キラキラしたハウスにも容易に接続していける手触りを持っている。しかし、彼らはそこから華やかなりしダンス・ミュージック方面へと大きく舵を切ることはなかった。ディスコ・パンクの狂騒や、ニューレイヴの猛威に身を委ねることもなかった。冒頭に記した結成当初からのアイデアを、ライヴを主軸とした活動をとおして血肉化していくこと。それがFRONTIER BACKYARDの辿ってきた道筋であり、だからこそ信用できるのだ。3作目となる『Rock The Boomy Style』でもそのスタンスは変わらない。ここには、これまでに培ってきた多彩なサウンドを自由自在に振り回してみせる、過去最高にフィジカルな彼らの姿がある。自身のスタイルを確立した一枚……ではなくて、最初から確立していたスタイルを完全にモノにした一枚。
bounce (C)澤田 大輔
タワーレコード(2008年09月号掲載 (P62))