日本の「チルアウト / バレアリック」ミュージックの先駆者CALM、4年振りのアルバムついに完成。ヴォーカリストとして中納良恵(エゴ・ラッピン)、nao(YoLe YoLe)らをフィーチャー。「サウダージ (郷愁) と和みが共存する音楽」ここに!
タワーレコード(2009/04/08)
2007年の〈METAMORPHOSE〉において、CALMはEGO-WRAPPIN'の中納良恵がリード・ヴォーカルを取る本作収録の“Sunday Sun”を、ボブ・マーリー“No Woman No Cry”とテルマ・ヒューストン“Saturday Night, Sunday Morning”の間に挿んでかけていたという。その場にいたら昇天してしまいそうなほど、テーマとしても曲調としてもピタリと合った流れに、〈流石!〉と思わず膝を叩いてしまったが、それ以上に感じたのはCALMというアーティストが作品の彼方から見せてくれる立ち位置だった。何かとクラブ・ミュージックの視点で語られがちだし、自身も作業上の立脚点は常にそこに置いているのだろうが、結果として彼の作品はそれこそボブ・マーリーやかつてのモータウンのアーティストたちが持っていたヒューマンなエネルギー、恒久的な〈生きる力〉のようなものを伝えてくれる。この4年ぶりのニュー・アルバム『Blue Planet』からダイレクトに感じられるのもそんな生々しい息吹だ。中納良恵や中島ノブユキ以下、参加ミュージシャンは実に10組以上。フロア的AORとでも言えそうな心地良く弾力性あるビートと流麗なメロディーが耳をくすぐってくるが、最後に手元に残るのは人と人との絆のようなもの。彼自身の〈顔〉がここまで明確に見える作品も初めてかもしれない。月探査機〈かぐや〉から見た地球はやはり青かった。CALMの〈宇宙〉もやはり青くて美しく、生気に溢れている。
bounce (C)岡村 詩野
タワーレコード(2008年01月号掲載 (P64))
谷川俊太郎の代表作に「朝のリレー」という詩がある。ある国が夜に覆われるとき、対極の国々には朝が訪れる。連綿と続く夜から朝へのリレー。そのなかで営まれる人間の生活もまた、国境を越えて連結し、地球というひとつの星を包み込んでいる――。CALMの新作『Blue Planet』は、上述の詩と同種の空気を纏っている。近年はK.F名義やILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)と組んだJAPANESE SYNCHRO SYSTEMとしてダンス音楽を追究してきた彼だが、本作に封じ込められているのは、〈地球〉を題材とした究極のチルアウト・ミュージックだ。ゆったりと刻まれる多彩なビートに呼応するかの如く、アンビエントにたゆたう電子音。躍動するトライバルなリズムと共鳴しながら、流麗な曲線を描く生楽器の旋律。さらにはJerry “Koji ”Chestnutsやnao(YoLe YoLe)、中納良恵(EGO-WRAPPIN')、高井戸第4小学校合唱部による歌唱、山崎円城(F.I.B JOURNAL)のポエトリー・リーディング、川のせせらぎや鳥のさえずりなどの環境音も添えられ、全編に美しい生命力とオーガニックな温もりを宿したバレアリックな世界を現出させている。都市、田園、海辺、沈む夕陽、輝く太陽、雨の予感……本作に収録された個々の楽曲は、自然/人工の境界を超越したさまざまな情景を喚起するだろう。けれど、それぞれの音像からアングルを大きく引いてみれば、映し出されているのは虚空に浮かぶ青い球体、ただひとつだ。年明けには対となる新作『Silver Moon』の発表も控えているが、あらゆる生命の息吹を刻み込んだこの傑作とどのように〈対〉になっているのか、いまから楽しみでならない。
bounce (C)土田 真弓
タワーレコード(2008年01月号掲載 (P64))