『今回のXRCD化の最大の美点と成果は、モノクロの歴史的名画がカラーになって蘇った衝撃に似ているとでも言えばよいのか、まさに驚くべきものがある。今回のマスター・テープは従来のLP用のマスターではなく、さらに一世代さかのぼったオリジナルマスターに拠っているという。その原テープのクォリティの素晴らしさもさることながら、XRCD化により、トスカニーニ率いるNBC交響楽団が誇っていた、目も覚めるような色彩感と傑出したヴィルトゥオジティが空前の華やかさと繊細さをもって見事に蘇っており、聴き手はほとんどクラクラとするばかりの感動をもってトスカニーニの名演に釘付けにされてしまう。ことに衝撃的なのが、このNBC交響楽団がいかに名手ぞろいのヴィルトゥオーゾ・オーケストラであったかという事実の再認識であろう。テクニックそして音色はいうに及ばず、各パートあるいはセクション相互で重なり合う表現の味わいの豊かさと情報量の精密さには本当に驚かされるし、オーケストラ・サウンドがパノラマのように拡がっていく響きの奥行き感と空間性にも心打たれてしまう。その結果、トスカニーニの演奏が特徴としていた厳格な情熱の背後に、実に柔軟で、さらにふくよかですらあった指揮芸術の妙味と素顔が浮かび上がってきているのである。これは音質改善といつた次元などではなく、新しいトスカニーニの演奏と言いたくなるほど感動的である。』(諸石幸生、ライナーノーツより)
タワーレコード(2009/04/08)
没後50年記念リリースXRCD24 RCA トスカニーニ・オリジナル・エディション[1]
これぞ録音の「世界遺産」――トスカニーニの「ローマ三部作」、XRCD24に登場。
2007年10月、ついに待ちに待ったトスカニーニのXRCD24化が実現!RCA所蔵のオリジナル・モノラル・マスターテープ(76cm/30ips)を使用して最高の状態で復刻する「XRCD24 RCAgスカニーニ・オリジナル・エディションの第1回発売は、トスカニーニの数多い録音遺産の中でも最高の名演とされるレスピーギの「ローマ三部作」(1949年~1953年録音)とドヴォルザークの「新世界より」(1953年録音)が登場。
1918年にトスカニーニが「ローマの噴水」を初めて指揮して以来、レスピーギとは深い友情で結ばれ、「ローマの松」アメリカ初演(1926年、ニューヨーク・フィル)、「ローマの祭り」世界初演(1929年、ニューヨーク・フィル)を手がけ、「ローマ三部作」はトスカニーニにとって重要なレパートリーとなった。そして、1949年から1953年にかけてNBC交響楽団と録音された「ローマ三部作」の録音こそが、トスカニーニ最高の名盤として不動の価値を獲得し、LP~CDとメディアは変遷しても一度もカタログからは消えたことがない。
トスカニーニの「ローマ三部作」は、まず「祭り」が10インチ盤として単独で発売され、続いて1953年に「松」「噴水」の2曲のカップリングでLP化(LM-1768)。その後「祭り」は、1956年になってコダーイ「ハーリ・ヤーノシュ」組曲との組み合わせで再発売されている。「松」「噴水」の2曲は、1961年には、ステレオ機器の普及にともなって企画されたトスカニーニ最初の擬似ステレオ(Electronic Stereo)加工された復刻シリーズのライナップにも加えられている(LME-2409)。LP時代の1978年に日本企画で復刻された「偉大なる芸術トスカニーニの真髄」シリーズ中で「祭り」「松」「噴水」の3曲が1枚にまとめられるという画期的なカップリングが誕生し、以後1984年の「ハーフ・スピード・マスタリング」シリーズLP(イタリアRCA主導による新たな擬似ステレオ復刻)、翌1985年のトスカニーニの世界初のCD復刻に際しても同一カップリングで登場し、もちろん1990年の82枚組のCD全集にもこの形で含まれていた。
以上のように多様なマスタリングによって発売されてきた経緯がある「ローマ三部作」だが、今回のXRCD24での復刻に当たっては、これまでのXRCD24の原則通り、最もオリジナルなアナログ・マスターテープにさかのぼり、細心の注意を払ってマスタリングを敢行している。それにより、リビングステレオ・シリーズでRCAの録音黄金時代を築き上げたリチャード・モアとルイス・レイトンの名コンビが捉えたトスカニーニ=NBC交響楽団の輝かしいサウンドが、前代未聞の明晰
さと色彩感を伴って瑞々しくよみがえっている。3曲とも名録音として知られるが、殊に1949年12月収録の「祭り」は、RCAによる最初期のテープ録音であることが信じ難いほどのクオリティである。 [コメント提供;BMGジャパン]
発売・販売元 提供資料(2009/04/08)