巨匠カザルスの指揮芸術を集約した貴重なライヴ音源！ベートーヴェンに肉迫した凄演！
マールボロ音楽祭と深い関わりを持つチェロの巨匠カザルスですが、ここに収められているベートーヴェンはこの偉大な音楽家の芸術の全てが注ぎ込まれた、忘れがたいディスクです。カザルスは既に80代後半という年齢でありましたが、音楽への燃えたぎる情熱は人知を超越したものがあり、軽妙な第8番を生命力溢れた説得力ある作品に昇華させました。90歳を超えて録音された第7番は、カザルスの音楽芸術に対する揺ぎ無い想いが凝縮されており、人間は音楽無しには生きられないということの核心に迫る不滅の名演です。

タワーレコード （2009/04/08）

1973年10月22日に96才の生涯を閉じたパブロ･カザルスは、今世紀最高のチェロ奏者というより、現代チェロ演奏の基礎を築いた史上最大のチェロ奏者であり、また指揮者、作曲家としてもすぐれ、平和と人類愛を訴え続けた偉大な人間としても忘れることのできない巨人である。～中略～カザルスがチェロ奏者として国外でも広く注目されたのは、1899年にパリにデビューしてからで、1900年からイギリスやアメリカにも演奏旅行して大成功を収めた。チェロ奏者としてのカザルスの偉大さは、その演奏がすばらしいことと、バッハの『無伴奏チェロ組曲』の再発見であろう。今ではチェロのための最高傑作としてあまりにも有名な6曲の『無伴奏チェロ組曲』は、バッハの死後100年以上も忘れられていたが、カザルスはバルセロナで学んでいた１３才の時にその楽譜を発見し、独自に研究してこの傑作を世に知らしめたのであった。～中略～第2次大戦後、プラードにこもるカザルスを慕う名演奏家たちが集まり、バッハの没後200年記念の1950年からカザルス音楽祭が開かれ、これはペルペニヤン、そして第2の故郷となったプエルト・リコのサンファンにひきつがれた。すでに70才を過ぎていたカザルスだが、彼の許に世界中から集まる演奏家たちと室内楽を演奏したり指揮をし、また若い演奏家の指導など、精力的に活動し、機会あるごとに世界の平和を訴えたのである。
このCDでカザルスが指揮しているベートーヴェンの交響曲は、1955年にカザルスがプエルト・リコに移ってから、毎年夏に彼が参加したマールボロ音楽祭で録音された。マールボロ音楽祭は、ドイツからアメリカに亡命したブッシュ兄弟とルドルフ･ゼルキンが中心になって戦後はじめた音楽祭で、世界的な名演奏家が学生や若い演奏家たちを指導し、室内楽やオーケストラ演奏を一緒に行ない、技術的な面ばかりでなく、音楽全般にわたって豊かな経験をつむことができるユニークな音楽祭である。カザルスは長年にわたる友人であるブッシュ兄弟やゼルキンに招かれ、この音楽祭にもしばしば参加した。このベートーヴェンの第7番と第8番も、マールボロ音楽祭に参加した演奏家たちによるオーケストラを指揮したもので、ヴェテランや若手など、さまざまな演奏家による、いわば臨時編成のオーケストラであるが、この演奏からは既存のオーケストラとは違った熱い表現意欲が伝わってくる。カザルスという、世紀の大音楽家の指揮の下、ベートーヴェンの音楽に対する真摯な演奏は、技術を超越して作品の本質を深く鋭く表現しており、指揮者としてのカザルスの偉大さを知る上でも貴重な記録のひとつとなっている。【解説書（28DC-5101）～浅里公三氏】

発売・販売元 提供資料 （2009/04/08）