ミラクルなDo Re Mi Faの調べが聴こえる。話題の人、中山うりの初CDがいよいよ登場だ。去年の〈フジロック〉の〈AVALON STAGE〉で拍手喝采を浴びた彼女、その時はまだ無名のミュージシャンだった。のちに配信で初の音源がヒットし、ライヴの観客動員も急増。その登場の仕方には〈アコーディオンを抱えたシンデレラ〉という惹句も大袈裟に聞こえない。ミュゼットやジャズなどを基にしたシックな曲調、それにぴたりと寄り添う柔らかな歌声。流れ出すと周辺の色を変えてしまう強い力を持つ音楽が詰まったのがこのデビュー・アルバムである。聴く人ごとにさまざまな捉え方ができそうな彼女の音楽世界だが、例えばノラ・ジョーンズに近い感覚を持つシンガー・ソングライターと見る人がいるかも。そこが強み。今後も自由なスタンスで自己の音楽性を拡げていくだろう予感が、このファースト・アルバムに貼り付いている。
bounce (C)桑原 シロー