≪原点に戻るため≫に1stアルバムと同じプロデューサー&同じスタジオにて制作された4thアルバム。これまで以上に音楽性の幅を広げ、ポップでキャッチー、そしてダンス・ミュージック的な要素までミックスした大胆な試みがみられる仕上がりに。
タワーレコード(2009/04/08)
前2作のプロデューサーであるエリック・ヴァレンタインと別れ、デビュー・アルバムを手掛けたドン・ギルモアとふたたび組んだことで、〈原点回帰!?〉と思われている節もあるようだけれど、とんでもない。原点回帰どころか、彼らはこの4作目でパンクの遙か彼方に辿り着いてしまった。それはもう痛快なまでに。とはいえ、この連中、そのルックスとアティテュードを除けば、デビューしたときからすでにパンクにはそれほどこだわっていなかったと思うし、こと音楽に限って言えば、ステレオタイプなパンク・サウンドを鳴らしたことはなかったはずだ。そういう意味では、この新作もこれまでの延長線上にあると考えるべきなんだろう。しかし、大胆なダンス・ビートの導入──なかでもニューウェイヴなディスコ・ナンバーの“Dance Floor Anthem”や不穏なテクノの“Keep Your Hands Off My Girl”──と、それでもなおかつ彼ららしいと思わせる、ある意味での完成度の高さには正直震えた。その他、キーボードやホーンを導入するなど、貪欲なまでのサウンド・アプローチに挑んでいるにも関わらず、前作よりもすっきりしているように聴こえるところがおもしろい。それは1曲1曲の歌メロがサウンドに負けないぐらい立っているからに違いない。思えば、彼らはデビューしたときから誰よりも、良い曲を作ろうと努力してきたバンドだった。当然、物議を醸すに違いない。そんなところも彼ららしい。この新作がどう受け止められるのかが楽しみだ。
bounce (C)山口 智男
タワーレコード(2007年04月号掲載 (P68))
ここ最近、USのいわゆる大味なバンドが興味深い。〈ポップ・パンク〉、特に〈エモ〉なんていう言葉はすっかり形骸化し、まっすぐ神棚行きレヴェルの傑作で大化けしたマイケミや、R&Bもクラシックもすべて自分色に染めたフォール・アウト・ボーイなどが、これまでひと括りにされていた殻からの脱却に成功している。そんななか、これらのバンドたちより若干早くシーンに登場し、全米のキッズを味方に付けていたグッド・シャーロットにとってはまさに〈いまが正念場〉だろう。リッチでフェイマスな人たちを揶揄していたのも今は昔、近頃はみずからもフェイマスなカノジョをはべらせ、すっかりセレ部員となった彼らのLA生活に話題が集中しがちだからこそ、通算4枚目となる本作ではバンドとしての真価が問われているのだ。今回はこれまでになく音楽性の引き出しを増やし、シングル“Keep Your Hands Off My Girl”では堂々とヒップホップ~ダブに接近して私たちの度肝を抜き、“Dance Floor Anthem”ではダンサブルなアプローチで拡がりのあるサウンドを手に入れた。しかし、“The River”のようなドライヴ感で攻めるロック・ナンバーや、軽快なホーン隊がフックとなったポップ・チューン“Broken Hearts Parade”で押し、甘くロマンティックな“Where Would We Be?”のようなミディアムもので引くという〈US大味バンド道〉から外れることはない。それは、彼らがいるべき場所を忘れず、同時に新たな一面を提示することを見失わなかったことが作品に結実しているからに他ならない。
bounce (C)加藤 直子
タワーレコード(2007年04月号掲載 (P68))