時間をかけてじっくり仕上げた、安藤裕子渾身のアルバム。「The Still Steel Down」他を収録。宮川弾作曲によるロックステディ、沼沢尚のドラミングが冴えるセカンドラインを堪能できる。安藤が創作意欲マンマンで望んだ力作です。POPSの強さと美しさを凝縮した何度でも聴きたい1枚。 (C)RS
JMD(2010/06/14)
桂冠『定番酒つき』CMテーマソング「のうぜんかつら」を収録したヒット・アルバム『Merry Andrew』から1年。安藤裕子待望のアルバム完成。その音楽性で女性シンガーとして確固たるポジションを確立した安藤裕子の本作は、多くの素晴らしいミュージシャンたちが参加したバリエーション豊かな内容となっています。初挑戦となる宮川弾作曲による可愛らしいロックステディ、沼沢尚のドラミングが冴えるセカンドライン、より深みの増した歌詞と楽曲で安藤裕子の世界観を凝縮した素晴らしい内容に仕上がりました。
タワーレコード(2009/04/08)
のんびりした美しさと、マイペースな優しさ、はかない強さ……ということで、『shabon songs』とは言い得て妙な3枚目のフル・アルバム。前作以上にバンドっぽさを増した仕上がりではあるが、それは当然ながら形骸的な〈ライヴ感〉とかを意味するものじゃなく、程良い湿度を帯びた楽曲世界は前作の延長線上にあるものだ。むしろ、簡素なバンド・サウンドのカラリと乾いた響きは安藤の体温を調節するかのように機能して、結果としてアルバムの隅々にまで不思議な温かみと懐かしさを行き渡らせている。彼女の描く詞世界に横たわる仄かな寂しさや諦念を軽やかにキャッチしたような山本隆二のアレンジも秀逸だ。さらに、雰囲気に逃げないキャッチーなメロディー感は今回も抜群で、その人懐っこさはジャングル・ビート風のダイナミズムが押し寄せてくる“雨唄”でも、ピアノとベースだけでしっとり披露する“シャボン ボウル”でも、稲垣潤一“クリスマスキャロルの頃には”そのまんま(!)のアレンジでビックリさせられる“絵になるお話”でも、メランコリックな“SUCRE HECACHA”でも変わることがない……と思ったら、大半が安藤の自作だった。が、〈自分で書いててスゴい!〉とかはどうでもよくて、本当に注目すべきは誰が書いたメロでも同じような口当たりで聴かせる彼女のヴォーカルに他ならない。これまでにも“ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ”や“君は1000%”の我流カヴァーを披露しているわけだし、そういう意味で彼女はいまもっともカヴァー・アルバムを作ってほしい歌い手だ。もちろん最高の褒め言葉として、この素晴らしい『shabon songs』を繰り返し聴きながら、あえてそう思うんである。
bounce (C)出嶌 孝次
タワーレコード(2007年03月号掲載 (P70))
フレーズのラストでちょっと裏返って不安定に揺れ、微かに破裂して消えていく歌声が、普段は聴き手の心に眠っている切なさ、儚さをフッと呼び覚ます――もちろんすぐに聴き分けられる、彼女の特徴のある透き通った声質自体が素晴らしいのだが、90年代に世界に衝撃を与えたアイリッシュ・バンド=クランベリーズの紅一点ヴォーカルであるドロレス・オリオーダンとも共通する、その独特なヴォーカリゼーションが歌手・安藤裕子の大きな才能のひとつであり、最大の魅力であることは言うまでもない。また、聴き手を選ばない、誰が聴いてもその音楽の良さが伝わるといった意味での王道ポップス=安定した良質のサウンドをバックに、この新作ではそれぞれの曲の世界観と共に歌い方を鮮やかかつガラリと変質させる、演出家/役者としての類い稀なる才能も存分に披露。さらに、僕と君、僕とあなた、私とあなた、私と君といった自分とひとりの相手との関係性から君/私のみで綴られるモノローグまで、曲ごとに登場人物の一人称と二人称を巧みに使い分けて物語る脚本家としての才能も秀逸。そんな1曲1曲が持つ感触は、特別な強い感情や感覚を喚起するものではなく、なんでもない日常でこそフワフワと浮かんで飛んではパッと消え去って……を繰り返していてほしいと思わせるもの――だからこそのこのアルバム・タイトルなんじゃないだろうか。チャーミングなルックスだけで彼女を判断すべからず、いやそこから入ってこの多面的な才能が詰め込まれた恐るべき完成度を誇るポップスに触れるのも良し、かな。
bounce (C)ダイサク・ジョビン
タワーレコード(2007年03月号掲載 (P70))