ミュンシュ時代の豪快サウンドから見事に変貌を遂げたボストン交響楽団の薫り高さは絶品!!
世界初CD化。
再評価も高まりつつある、名匠ラインスドルフが最も得意としたドイツ・オーストリア音楽。中でもブラームスとモーツァルトは“十八番”のレパートリーといえるでしょう。
ラインスドルフは、ロマンティックな情感が古典美の形式の中に見事に凝縮されたブラームスの「第4」において、余剰を排し、磨き上げた音の直截的なアプローチによって曲の本質を鋭く描き出しました。
一方の「リンツ」においても明快なリズムと音感がモーツァルトの魅力を生き生きと表現しています。
タワーレコード(2009/04/08)
“何も足さない、何も引かない"男の美学
オーストリアで生まれ、主にアメリカで活躍した名指揮者のエーリッヒ・ラインスドルフ(1912-1993)が亡くなってすでに10年を過ぎたが、最近になってこの指揮者の実力が正当に評価されつつあるのは誠に喜ばしいかぎりである。わが国の特にクラシック音楽の世界では、ヨーロッパ崇拝主義が根強くはびこっており、アメリカで活躍していた音楽家はあまり評価されなかった。したがって発売される音源の数々も低い評価しか得られず、音楽ファンにも見過ごされるか、すぐに廃盤の憂き目にあうことが多々あったのである。しかしCD時代になって、しかもクラシック音楽のCDが比較的安く手に入るようになってから、こうした状況は変わってきている。今回のラインスドルフにしても続々と過去のアルバムが発売されるに至っている。先頃、SACDで発売された「トゥーランドット」を始めとするいくつかのオペラ作品にも、録音の良さと共にラインスドルフの音楽作りに大いに驚嘆させられたのである。ラインスドルフの演奏を改めて聴いてみると、オーケストラの統率力に優れ、極めて真摯な態度で楽曲の良さをありのままに伝えようとする大きな意志の力を感じてしまう。音楽のミューズに無垢で奉仕する清廉さと誠実さがあふれた演奏なのだ。ここに聴くブラームスやモーツァルトは、決して口当たりのよい演奏ではない。そのためにかつては、"即物的"とか"冷たい"という評価となったのであろう。しかしよく効いてみると、強固な弦楽のアンサンブルを土台として、時折みせる柔らかな木管のニュアンスには、彼の中に沁み込んでいるヨーロッパ伝統音楽の血が脈々と感じられるのである。"何も足さない、何も引かない"こうした純度の高い演奏は、くり返し聴けば聴くほど味わいの出て来る演奏といえるだろう。名門ボストン交響楽団が持っているヨーロッパの楽団の香りをスパイスにして名匠が作り上げた至高の演奏をぜひ味わっていただきたい。(宮澤賢哉)
タワーレコード(2009/04/08)