ヒップ・ホップ・グループ、ザ・ルーツの通算10枚目のアルバム。 (C)RS
JMD(2010/06/14)
キャリアの記念すべき10枚目のアルバム(オリジナルとしては6枚目)が、Def Jam移籍第一弾として登場!Def Jamは実は彼らにとってデビュー前から憧れていたレーベルだったとか。今回はそのDef Jamから、ショーン・カーター社長(=ジェイ・Z)のフル・サポートを受けてのリリースです!女性コーラスによるメロディアスなフックと”生”の感触を活かしたソウルフルなリード・トラック「Don't Feel Right」を筆頭に、2005年2月に亡くなったプロデューサーのJ・ディラへの追悼曲「Can't Stop」、前メンバーであるマリク・Bとダイス・ロウをフィーチャーしての激スリリングな「Here I Come」、Black Thoughtの男気フロウにシビれっぱなしな「Game Theory」など、”The Roots”が”The Roots”たるゆえんを証明する、くそカッコ良しな傑作!
タワーレコード(2009/04/08)
ジェイ・Zが去る6月に行った『Reasonable Doubt』のリリース10周年記念コンサートにおいても、イラデルフォニックスを率いてジガを全面サポートしたクエストラヴ。彼と理知的なラッパー、ブラック・ソートの2人を中心に組織されるフィリーのヒップホップ・バンドが、オリジナル7枚目となる新作をドロップ。それも前述のジェイ・Zが代表として実権を握るデフ・ジャムからの発表だ。といってもラジオ・フレンドリーな作風にはならず、戦争の惨状もトピックのひとつとして扱うなど、いままでの作品以上にシリアスでポリティカルな内容のアルバムと言える(アートワークからして不穏だ)。例えば前々作ではギタリストのロック的な起用法が光っていたけれど、今作ではエレクトリック・ギターの華々しい音色を前面に出さず、サウンドの根幹/アンサンブルを支えるリズム隊のひとつとして淡々と機能させている。あくまでも主役はブラック・ソートの蝶のように舞う言葉であり、蜂のように刺す辛辣なメッセージなのだ。ダイス・ロウやマリク・Bら、ゲスト陣をほぼ身内で固めているのもその裏付けだろう。本編の末尾を飾るのは亡くなったデトロイトのヒーローに捧げられた8分38秒のレクイエム“Can't Stop”である。結成20年の節目を前にしたこの雄弁なヴェテラン・グループは、デフ・ジャムという晴れがましい舞台の上で、いまヒップホップ・アクトが演るべき責任をまっとうしたのかもしれない。
bounce (C)河野 貴仁
タワーレコード(2006年09月号掲載 (P78))
ルーツの新居となったデフ・ジャムの現CEOであるジェイ・Zの『Unplugged』にて、彼らがフィリーの仲間を引き連れてバックを務めたのが約5年前。楽器を手にするマイスターが集うフィリーのシーン、その中核がルーツであることを思い知らされた。いや、スコット・ストーチが参画していた初期の作品群でもそれは実感できていたものだったが、それゆえ彼らには〈良心的な生演奏ヒップホップ・バンド〉というイメージが良くも悪くもついて回ったものだ。が、そうした風評とは裏腹に、ルーツとその周辺の根にあるのはハードコアでレフトな精神。そのことを音そのものでわからせようとしたのが、ギター・パートを増やしてパンクスのように暴れ狂った『Phrenology』以降の近作であり、周辺アーティストにもその気分を植え付けてしまうほど、結果的にルーツの作品は後のフィリー・シーンを占う試金石としても機能してきた。ルーツが動けばフィリーが動く。今作も、照れ隠しとも取れるシリアスなコンシャス・ムードを提示しながら鋭いビートとライムで突進。キング・ブリットのトライバルで宇宙遊泳的な音世界を人力で再現したような冒頭曲から、かの地のシーンの未来を見据えたような未体験の音が飛び出してくる。タイトで荒くれたグルーヴはまさに現在進行形のファンク、か。かつてミーターズやブッカー・T&MG'sがそれぞれ地域独自の音を築いたように、いまフィリーという土地でそれを進化させ続けているルーツ。彼らはまだ最強のままだ。
bounce (C)林 剛
タワーレコード(2006年09月号掲載 (P78))
ラストのM-13を聴くと惜しい人がこの世界から旅だったと教えてくれる。強がるだけがHip Hopじゃない。弱さがあるから強くなれる。この曲には泣かせられた。