究極のポップ/ロック・チューンな展開で話題を振りまくアリーシア・ムーアことピンク嬢の4thアルバムが完成!現代アメリカン・カルチャーにパンチを入れるピンク嬢らしい1stシングル「Stupid Girls」をはじめ、最高にグラマラスでポップなロック・チューン「U+Ur Hand」、大統領に宛てたオープン・レター「Dear Mr. President」、ベトナム兵でもあった父とのコラボレーションを弾き語りでじっくり聴かせるトラックなど、ヴァラエティに富んだ楽曲が盛りだくさん!ジャンルはアーバン、ロック、フォーク、そしてポップスと様々だが、どれも彼女の声が冴えわたる“100%ピンク”な楽曲ばかり!ピンク自らプロデューサーを務め、マックス・マーティン、ビリー・マン、ブッチ・ウォーカー等ヒット・プロデューサーをも布陣した、彼女自身が“最高傑作”と豪語する自信作!あっ、結婚おめでとう!
タワーレコード(2009/04/08)
〈あたしゃ死んでない〉というタイトルからして立ち位置は明確だ。〈悪かったね、死んでなくって!〉と悪態をつきながら、豪快なガハハ笑いと共に戻ってきたピンク。世間でチヤホヤされているセレブ・ガールズとは違うのだといま一度教えてくれるのと同時に、何より彼女自身がそういう自分を楽しんでいるのがよくわかる。先行シングル“Stupid Girls”のプロモ・クリップにおいてパリス・ヒルトンやリンジー・ローハン、ジェシカ・シンプソンやビヨンセをネタに、彼女たちを〈バカ女ども〉呼ばわりしているけれど、それだって決して負け犬の遠吠えではなく、〈どうでもいいけど、アンタたちってホントに幸せなの?〉と疑問を投げかけている。ピンク姐御はそれくらい余裕綽々だし、肝っ玉が据わっているのだ。サウンド面ではロック・シンガー然としていた前作『Try This』でのアプローチから若干それ以前に立ち戻った感じで、ポップ&キャッチー。そこに80年代っぽいメロドラマ性が加味されて、曲ごとにかなり表情は異なっている。でも、基本的にはメインストリームの枠を外れない。そう、ピンクはメインストリームの中でメインストリーム批判をやって、メインストリームを乗っ取ろうという魂胆なのだ。そういう意味ではエミネムの手法にも近いものを感じるが、ポップ・シーンで最近それをやろうとした女性といえばケリー・オズボーン。外見至上主義やセレブ崇拝を否定して、いまのショウビズ界でどう生き残れるか||きっとピンクが教えてくれるに違いない。
bounce (C)村上 ひさし
タワーレコード(2006年05月号掲載 (P72))
何となくグウェン・ステファニーのアレとジャケが似てるが……ファースト・シングルにしてアルバムの幕開けを飾る“Stupid Girls”も、レゲエ風味の添え方がノー・ダウトみたいだ。ただ、同曲のプロデュースにあたったのはビリー・マン・・古くはダイアナ・キング、最近では(奇しくも今回ピンクの標的となった)ジェシカ・シンプソンやリッキー・マーティンらと組んで結果を出してきたポップ職人である。で、乾いたギターをアレンジの中枢に据えたリズミックな作風を得意とする彼が半数以上の楽曲を手掛けたことで、この新作はエモいメロディーと程良くアーシーな耳触りが通底した上々の仕上がりとなった。他にも、ケリー・クラークソン“Since U Been Gone”で復権したマックス・マーティンが相棒のDrルークと共にグラマラスなブギー“Cuz I Can”などヒネリのあるポップ・チューンを提供、一方ではブッチ・ウォーカーがより爽快なロック・ナンバーを用意してもいる。さらに、エミネムを思わせる叙情的なループが敷かれた“I Got Money Now”は、ドクター・ドレーのお抱えベーシストで、単独でもフィオナ・アップルとの仕事が記憶に新しいマイク・エリゾンドによる異色曲だ。このように間口の広い楽曲を気負いなく並べたうえで、結びに(日本では呑気なTVCMでお馴染み)クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルの反戦歌“Have You Ever Seen The Rain?”への返歌と思しき“I Have Seen The Rain”を置き、それをヴェトナム帰還兵である父親といっしょに演るあたり、形骸的な社会派ロッカーにはない気骨も感じさせる。文句ナシにピンクらしい傑作じゃないか。
bounce (C)出嶌 孝次
タワーレコード(2006年05月号掲載 (P72))