ヒップ・ホップ、R&Bシーンを中心に活動するプロデューサー・チーム、ネプチューンズの秘蔵っ子、ケリスの通算4枚目のアルバム。 (C)RS
JMD(2010/06/14)
ネプチューンズ完全プロデュースのもと、ブッ飛んだキャラクターと雑食性のエクレクティック・ソウルを売り物に衝撃的なデビューを飾ったケリス。エグゼクティヴ・プロデュースも担った前作『Tasty』では、ネプ以外のクリエイターとも組んでカラフル&ヴィヴィッドなセクシー路線への傾倒を見せていたが、ナズとの結婚を間に挿んだこの4作目でも、彩り豊かでエレガントな確固たる〈ケリス・ワールド〉が貫かれている。まずはトゥー・ショートと合体したアヴァンギャルドな変態エロ・バウンスの先行シングル“Bossy”(ファッショナブルなプロモ・クリップではポール・ウォール特製のグリルズも装着)に総立ち! 目下最注目のプロデューサー、ポロウ・ダ・ドンの麻薬的な猥雑ファンクがヤバすぎる“Blindfold Me”では旦那と目隠しプレイで快楽を求め合い、ダンスホール調の“Fire”ではスプラガ・ベンツと突進。ウィル・アイ・アムの手掛けたエレクトロ曲やミッシーみたいなホラー系も披露しつつ、ラファエル・サディークによる幻想的なミディアム“Circus”以降のメロウな展開がこれまた絶品! シー・ローとの哀愁ほっこり曲や、オペラ・コーラスがユニークな“Like You”、突如サンバに転調する“Have A Nice Day”など、リラックスしながらも入念に練られた作りと、めくるめく音世界はとにかくクリエイティヴだ。現行のポップ・フィールドを席巻する、最先端にして異形な前衛R&Bのおもしろみを味わうには持ってこいの逸品。それにしても本当〈イイ女〉になりましたな!
bounce (C)池田 貴洋
タワーレコード(2006年11月号掲載 (P82))
リル・キムまで行っちゃうと本気でバカ?って気もするけれど、このケリス姐さんはギリギリ、スレスレ。もしかしてバカなの?と思わせておいて、実はちゃっかり計算されたおバカ&下世話&キワモノの三拍子、そして品行不正な超エロスで演じきる。デビューした頃はとにかく怒ってる怖いお姐さんって感じだったのが、いつの間にやらエロキモイ(?)お姐さんへと大変身。最近ではグウェン・ステファニーに始まって、半ケツのファーギー姐さん、プッシーキャット肉弾、急カーブで乱入してきたネリー・ファータド、人生そのものがおバカなパリスに暴走ブリと、女子おバカ路線はもはや止まらぬ勢いとなっているが、そういえばこの人、ケリスの前作『Tasty』あたりがそうした流行への分岐点だったような気も。あの“Milkshake”にヤラれた人は多かったでしょ? で、この3年ぶりのニュー・アルバムなのだが、流石にあれを超える名曲/迷曲は見当たらないものの、先行シングルの“Bossy”は聴けば聴くほど耳タコだし、ズケズケな物言いといい、ほとんど変態なセックス・アピールといい、猛女ぶり、怪女ぶりに衰えなし。結婚してもまったく変わっていないどころか、ますます磨きがかかっている。旦那のナズとふたりして目隠しセックスなんつー曲(“Blindfold Me”)をやってるくらいだもんね。硬派だったナズがケリスのエロ光線にすっかりヤラれてしまったのか、それとも彼のほうが一枚上手の猛獣使いなのか、そこんとこも気になります。
bounce (C)村上 ひさし
タワーレコード(2006年11月号掲載 (P82))