ナクソスではシュミードルやバルトロメイなどウィーン・フィルの名手たちと共演し、広く名前を知られるようになった乾まどか。フンメルの作品には、ウィーンの音楽スタイルを修得した彼女だからこそ表現できるものがあります。ウィーン音楽の継承者たる証を、「幻想曲」というジャンルで味わってください。

フンメルは、ヨーロッパ最高のピアニスト兼作曲家であり、ピアノ技法の改良者の一人だと見なされており、ベートーヴェンやリストも含む同時代の人々から多大な尊敬を受けていました。ピアノ作曲に革命をもたらし、ピアノ演奏に関する著作においては、2200例以上もの、想像しうる限りのピアノを弾くに当たって起こり得る事態について記述しています。新しい運指法をあみ出し、音色の色彩的な扱い方は後世の音楽に影響を及ぼしました。「幻想曲作品18」は、大規模ピアノ・ソナタそのものであり、ショパン、シューマンやシューベルトの作品を予感させます。一方、「ロンドと幻想曲作品19」は、後期のロッシーニ、ドニゼッティやベッリーニの音楽語法を思わせるものです。ここに収められた「幻想曲作品123」は、世界初録音となります。

タワーレコード （2009/04/08）