Uncut (p.102) - 3 stars out of 5 - "Jay Kay returns with another blast of super-slick soul..."
Vibe (p.150) - "[T]he space cowboys return with a vengeance, sounding funky as ever."
Rovi
スペース・カウボーイが帰ってきた。そうそう、あのファットボーイ・スリムが主宰するサザン・フライドの若頭がね、ついに新作をリリ……ってのはスペース・カウボーイ違い。往年のリスナーの頭には、ジャミロクワイの『The Return Of Space Cowboy』が浮かぶだろうし、同作がスライ&ザ・ファミリー・ストーン“Spaced Cowboy”にインスパイアされたブツだったと思い出す人もいるかも知れんな。そのように、アシッド・ジャズからデビューして数年はそのスライやスティーヴィー・ワンダーらの影響を無邪気にアピールしていた彼らも、ここ最近はフィリー~サルソウルを換骨奪胎したディスコ・チューンに比重を傾けていた。でも、アズーリの人気コンピ〈Late Night Tales〉でソウル~ファンク馬鹿な選曲を披露していたジェイ・ケイだけに、今回はやってくれてるよ。先行シングル“Feels Just Like It Should”は、ジェイのヒューマン・ビートボックスを敷いた不穏なビートとワウワウ轟くギターがシノギを削り合う……強引に言えばスライ的なファンクだ。まあ、強引に言わなければレニー・クラヴィッツだったりするのだが、それを一発目のシングルに選ぶあたりにも不敵な自信を感じるし、近年路線の表題曲やワンダーな筆捌きで描いたメロディーが美しい“Seven Days In Sunny June”といった手クセ(悪い意味じゃない)を無造作に並べつつ、ワイルド・チェリー丸出しのファンクからガレージ・ロックまでを随所で聴かせる作りは、改めてバンド感を優先したことの証左だろう。そういう意味では仕切り直しの力作と呼んでも差し支えないです。
bounce (C)出嶌 孝次
タワーレコード(2005年07月号掲載 (P72))
ウワサによると、夏のツアーに向けてボクシングで体力作りをしているというジェイ・ケイ。彼のヒューマン・ビートボックスもフル回転する冒頭のロッキン・ファンクな先行シングル“Feels Just Like It Should”でのあけっぴろげな肉感性然り、アルバム・ジャケットのこれまでには考えられなかった生身っぷり然り、2005年型ジャミロクワイはシンボルとしてのメディシンマンをあまり必要としていないのかもしれない。前作『A Funk Odyssey』のUSでのリリース日が奇しくもあの年の〈9.11〉で、その時にちょうどプロモーションでマンハッタンを訪れていたメンバーたち。その後、各人が複雑な思いを抱えて活動していたのは容易に想像がつくし、ジェイ・ケイはしばらくの間、たっぷり休養を取りながらのマイペースな創作を続けていたようだ。そして導き出された彼らのひとつの答えが、本作での〈とことん陽性〉とでもいうべき明快さ。歌謡ソウル(?)、ガレージ、エレクトロ・ポップ……と、これまで以上に多彩(で、ヴォリューム満点!)なコース料理を出されたワケだが、アルバムを通して聴いてまったくダレない味付けがされている。音の外的形状は寸分の狂いもなく整っていて、かつ中身はアツアツのトロトロ。彼らが生来持ち合わせていたラテン性=悦楽への飽くなき欲求と、時に頑固なまでの職人気質との双方がせめぎ合った結果、至極アバウトでフリーキーな筆致で描かれているように見えるが、実は緻密に計算され尽くした〈ナスカの地上絵〉みたいなスケール感を備えた作品に――なんて言ったら誉めすぎなんでしょうか。
bounce (C)佐々木 俊広
タワーレコード(2005年07月号掲載 (P72))