もし、あなたの家族やペットがテロや戦争に巻き込まれたら? 実際に〈9.11〉でその経験をしたブルース・ウェバーは、この恐怖の体験を期に自分の愛犬であるトゥルーに手紙を書きます。それを映像化したのが今作「トゥルーへの手紙」。
監督を務めたウェバーは、80年代の写真業界で革命を起こし、チェット・ベイカーの実像に迫った88年の映画「レッツ・ゲット・ロスト」でも知られています。彼の撮る映像カットは何気ない象形を映しているにも関わらず、そのひとつひとつが多くを物語る印象的なものです。今回の作品でも、犬たちが走り回る風景であったりサーフィンの場面であったり、雨が降る場面でさえもなぜか心に染み入ってきます。そんな素朴だけれども何気ない生活の瞬間を映した映像に、抜群の好作用を与えているのがジャズ・ナンバーの数々。ドリス・デイやジョニー・ジェイムス、エラ・フィッツジェラルドらの歌声に合わせてゆっくりとコマ送りで移り変わる映像、手紙やポエムを読み上げる声、キング牧師の演説まで、すべてがリンクして観ているものの体内へ流れ込んできます。それもこれも〈愛〉というテーマが全編に渡って静かに流れているから。海辺ではしゃぐ犬たちをこんなにも天真爛漫に見せることができるのは、愛情溢れる飼い主である彼でなくてはできなかったことでしょう。
ヴェトナム戦争や人種差別の暴力などの画に挿入される、温かい歌声とトゥルーへの呼びかけに、平和の素晴らしさを味わえます。
bounce (C)岩崎 容子
タワーレコード(2005年10月号掲載 (P116))
愛犬家としても有名な、写真家ブルース・ウェーバーの
愛する犬との友情・家族愛のプライベート・フィルム
のサウンドトラック。優しいジャズとヴォーカルがいっぱいの
2枚組。
『トゥルーへの手紙』(2005)
監督 ブルース・ウェーバー
アルバム封入ジャケットは、さながら、ちょっとした、おしゃれな
ワンちゃん写真集。そして、サントラの内容は、ウェーバー
本人の選曲による、ドリス・デイ、ブロッサム・ディアリー、
マーヴィン・ゲイ、ロス・インディオス・タバハラス、
マリアンヌ・フェイスフル、ジョニ・ジェイムス、ジュリー・クリスティ、
ジミー・デュランテといった、なつかしの優しいヴォーカル/ポピュラー・
ナンバーに、往年のビッグバンド・ジャズなどの選曲で。
休日の夕暮れを楽しみながらゆっくり楽しみたいおしゃれなアルバム。
日本盤のみのリリース!!
(C)馬場敏裕
タワーレコード(2005/11/01)