前作『HIGHVISION』において訪れた、これまでを総括したからこその破壊と再生の季節。いまにして思えば、その意志は同作の先行シングル“RECREATION”で明確に示されていたわけだが、その過程で彼らは、ジャンルの細分化によって求心力が低下したと思しき音楽を、いま一度〈混沌〉に戻そうという動きとシンクロした。その具体例は、ポスト・パンクやダブ/レゲエすら呑み込んだラリー・レヴァンを象徴とするNYのアンダーグラウンド・ディスコ・カルチャーの再評価/再解釈であったり、日本における先駆的な動きとして、すでに二見裕志監修のコンピレーション〈DREAM ISLAND〉シリーズと『Padlock』初CD化という形だったりで具現化されつつあるが、SUPERCARが選び取ったのは、そのなかでもダブのディレイに託されたサイケデリック・ミュージックの側面。それを皮膚感覚で感じ取り、バンドで鳴らした本作は本当に画期的だ。個人的には、ポスト・パンク・リヴァイヴァルな作品ではなく、80年代初頭のアイランドに数多くの名盤をもたらし、コンパス・ポイントのマナーを現代に蘇らせたノルウェーのクリエイター、オーラフ・ブレッケ・マティセンの2003年作『N.A.O.M.B』のような名盤と並び賞されるべきではないかと考える。日本におけるサイケデリック・アートの第一人者、田名網敬一と宇川直宏のコンビによるロック曼陀羅が広がる圧倒的なアートワークも含め、2004年屈指の傑作アルバムがここに誕生した。
bounce (C)小野田 雄
タワーレコード(2004年03月号掲載 (P74))
音符が、○や△や□が、自在に伸長し形を変え、弾け跳びスキップしているように感ぜられる音楽、もしくはこのスリーヴのような曼陀羅ポップ(?)で聴き手の視界を占拠するような音楽。SUPERCARの音楽は、ともするとそうしたものに聴き紛うけれど、これは、彼岸の向こう側の音楽ではないと思う。『ANSWER』は〈ANSWER〉ではなく、〈ANSWER〉を見つけるためのもので、だから『ANSWER』は結論を導かない。ここに聴かれるのは、音楽や言葉を、その信じがたいものを信じようとする意志。だから彼らは実直、とさえいってもいいだろうと思う。『ANSWER』には英語詞と日本語詞が用意されていて、多くの曲で、それらはちゃんぽんに歌われる。それらは、話法を越え、俄然互いの注釈以上のものとして旋律に踊っている。そして、異議申し立ても……ロックだ。『ANSWER』は、あなたの内面に押し入って、心臓をむんずと鷲掴む。君だ。学校への道すがら、欠伸を焦燥で噛んで殺して、〈胸のサインにゴーを出す度/ただ前に前に急ぐ旅〉(“GOLDEN MASTER KEY”)のメロディーと言葉を抱えて、ぐいぐい歩いて欲しく思う。〈やつを撃て/いっせいに撃て〉(“THE WORLD IS NAKED”)。〈やつ〉は、誰?……あと、ええと! ベースが素晴らしい。
bounce (C)村松 タカヒロ
タワーレコード(2004年03月号掲載 (P74))