フジロック05に出演のアイスランドのアンビエント/ポストロック・バンド、シガー・ロスの東芝EMI移籍第1弾アルバム。アイスランド語でのヴォーカルを中心に、叙情性豊かなアンビエント・サウンドを聴かせる1枚。 (C)RS
JMD(2010/06/14)
今やビョークと並んでアイスランドを代表するカリスマ4ピース、シガー・ロスの約3年ぶり、EMI移籍第1弾となる4thアルバム!グラミー賞でもBEST RECODING PACKAGEに選ばれ、ここ日本でも大きなヒットとなった2002年の『()』以来となる本作は、レコーディングに約1年半を費やしたとのこと。作曲、パフォーマンス、そしてプロデュースを、共同プロデューサーKen Thomasと共にアイスランドにある所有スタジオでメンバー自らが手掛けた作品。スケールが大きいかと思えば、一片は細く繊細。その独特の空気感は、もはや彼らにしか出せません。浮遊感に満ちた、冷たくも暖かい温もりがなんとも叙述的です。『Takk』はアイスランド語で「ありがとう」の意味。彼らの素晴らしい才能を新たに証明してくれる1枚!
タワーレコード(2009/04/08)
2003年のMTVヨーロッパ・ミュージック・アワードで〈ベスト・ビデオ賞〉を受賞した“Untitle 1”をはじめ、シガー・ロスのプロモ・クリップにはさまざまな子供たちが登場する。灰が降りしきる未来の街で防塵マスクを被り、黒い雪だるまで無邪気に遊ぶ子供たち。あるいはフットボールの試合中に、もつれるようにキスを交わし、大人たちに引き離される二人の少年。バスに乗った精神薄弱の子供たちは、海辺で妖精のように踊る。そんなふうにシガー・ロスが独自に作り出した言葉で歌ってきたのは、まだ世界に意味を与えられるまえ、無垢の領域で巻き起こるエモーションについてだった。3年ぶりとなる新作『Takk...』では、そんなシガー・ロスの歌が、これまで以上にオープンで力強く脈打っている。バンド・サウンドにエレクトロニクスやストリングスが溶け合った音響詩は、アイスランドの自然そのままにプリミティヴな幻想そのもの。シューゲイザーの岸辺を漂う文学少年のように、フラジャイルなファルセットを聴かせるヨンシーの歌声も危ういほどの美しさだ。ちなみにバンド名はヨンシーの妹の名前であり、〈勝利の薔薇〉という意味も持つらしいが、本作はこれまででもっとも、その言葉のイメージに近い作品といえるかもしれない。そして、できればこうした前置きなしに、この音の洪水を浴びてほしい。ここにあるのは、オーロラのように発光するイノセンスそのものなのだ。
bounce (C)村尾 泰郎
タワーレコード(2005年09月号掲載 (P64))
シガー・ロスのアルバムを〈聴き易い〉と評しては誤解が生じるかもしれない。もちろんこの4作目は単純な3分ポップ集ではないし、相変わらず唯一無二の音だし、かといってこれまでの作品が難解だったわけでもないのだから。それでも、メリハリの利いた曲展開が目立ち、静かに内へと潜るような感覚に満ちていた前作に比べると、ずばりラウド&ヘヴィーで開放的。飛翔する歌声と浮遊するアブストラクトなサウンドのアンサンブルに、グッと重厚さを増したリズム・セクションが加わり、絶妙なバランスで凪を挿みつつ小爆発を重ねる、壮大で華々しい作品に仕上がった。事前に枠組みを設けず、曲を書きながら1年半をかけて録音したというだけに、まだ変化の途中にあって生き物みたいに蠢いているような感触さえある。また、明確に浮き彫りにされた力強いメロディーラインも、その躍動感と無関係ではあるまい。俄然歌っぽさがアップしており、共にシングル・カット予定の“Glosoli”や“Hoppipolla”が好例だ。それに、従来は彼らが独自に編み出した言語〈ホープランディック〉を使い、特に前作ではアルバム・タイトルは『()』、収録曲もすべて無題で貫いたものの、今回は詞をアイスランド語で綴り、曲名も添えている。従って、言葉がより大きな役を担っているに違いない。現時点で唯一わかっているのは〈Takk〉が〈ありがとう〉を意味することのみだが、確かに感じられる叙述的な趣がこのうえなく新鮮だ。
bounce (C)新谷 洋子
タワーレコード(2005年09月号掲載 (P64))