自動ピアノを改造した「プレイヤーピアノ」の作品で知られるナンカロウですが、1940年代に作曲したストラヴィンスキー風のオーケストラ曲や、プレイヤーピアノを使った曲、"普通の"ピアノ曲など、ナンカロウの作風カタログ的な一枚です。

リゲティから「現存する作曲家中最高の音楽を作曲している」と賞賛されて以来、コンロン・ナンカロウは、アイヴズやケージといったアメリカ作曲家界の偉人の伝統を受け継ぐカリスマ的な作曲家となりました。「ヴァイオリンと自動ピアノのためのトッカータ」や「前奏曲とブルース」といった初期の作品は、ジャズとバッハ風の対位法を想像力に満ちた手法で一つにしたものです。1940年代には、ナンカロウのともすると複雑過ぎる音楽を、演奏者が演奏を嫌がったり、技術的に演奏できなかったりしたことに業をにやし、自動ピアノのとりこになりました。ナンカロウがもっとも親しみを覚えていた楽器が自動ピアノなのです。70歳代になり、「タンゴ」や「小オーケストラのための小品第二番」といった作品を発表してから、ナンカロウの音楽は広く聴衆に聴かれるようになり、力強くて温かみがあり、機知にも富んでいる彼の音楽の真価が完全に知られるようになったのです。

タワーレコード （2009/04/08）