ブラームス: 悲劇的序曲、R.シュトラウス: 交響詩「ドン・ファン」、シューマン: 交響曲第2番

ステレオ録音、初出音源！ジョージ・セルの真髄、ここに極まれり！
1969年6月、セル最晩年のベルリン・フィル客演ライヴ～シューマン／交響曲第2番、R.シュトラウス「ドン・ファン」他！
1970年大阪万博来日時の鮮烈な感動を塗り替える、深い感懐と畏敬の念を抱かずにはおかない奇跡のライヴ！
1970年の大阪万博来日時に鮮烈な印象を遺して他界した巨匠ジョージ・セル。あれから35年の歳月を経て、奇しくも、愛知万博のタイミングに突如として現れた超弩級の初出ライヴ音源をご紹介いたします。
「私の使命は、アメリカとヨーロッパの音楽各々の利点を融合させることです。アメリカのオーケストラが持つ清々しく華やかなサウンドと各楽団員の妙技に、ヨーロッパ特有の伝統的な感性と、表現の温かみ、そして完成された様式美を加えたいのです。」（セル自身のクリーヴランド管就任声明より）・・・この声明があまりに見事に実現されたことは、CBS/SonyやEMIに残る数々の録音から伺い知ることはたやすいですが、今回のこのライヴ録音によって、ヨーロッパのオーケストラにも同様の影響を及ぼしたことが証明されたといえます。
1969年6月26日、セルはこの日のコンサートのために、悲劇的序曲と「ドン・ファン」、そして生涯に渡りこよなく愛してやまなかったシューマンの交響曲第2番をメイン・プログラムに用意しています。いずれもセルが最も得意としてきた楽曲ばかりで、悲劇的序曲では厳格な様式美を保ちながら実に気宇壮大なブラームスを展開しています。「ドン・ファン」では、手兵クリーヴランド管に聴かれる精緻を極めたスタイリッシュなアプローチに加え、カラヤン・サウンドとでも呼ぶべきベルリン・フィルの豊麗な音響が相まって、度肝を抜くスケールで聴く者を圧倒します（演奏時間も16分45秒とセルの演奏としてはかなりゆったり目）。また、楽曲途中に現れるホルンの咆哮は鳥肌もの！です。さらに、水が滴るように艶やかな美音をふりまくコンマス、シュヴァルベのソロが絶品で、これが聴けただけでもお値打ちものです。そして最後はセルの十八番、シューマン第2。いつもながらの細部まで彫琢された表現力はもとより、BPOの機能美を最大限に駆使してスリリングな演奏を展開しています。驚くべきは、この最強軍団BPOを完全に掌中に収め、意のままに操り、いつものスタイルを見事なまでに具現化しているいるという点です。その様は客演レベルのものでは到底ありません。それにもかかわらず、耳を疑うほどの高水準で演じてしまうセルの手腕にはただただ畏敬の念を抱くばかりです。ちなみに同年1月から2月にかけて、同曲を引っさげてクリーヴランド管と共に本拠地セヴェランスホールをはじめボストン・シンフォニーホール等で演奏しており、それらがBPO の客演を睨んだ下準備であったことは疑う余地もありません。そうして、ここに、マエストロの至芸とも呼ぶべきシューマン第2の奇跡的な名演が誕生したのです。そして、このライヴ感を伴った良質なステレオ録音で聴けることに無上の喜びを禁じ得ません。