裁かるゝジャンヌ クリティカル・エディション

無声映画の芸術の最高到達点
唯一現存するデンマーク語字幕付き完全版プリントのインターネガから直接起こした世界初のハイヴィジョン・デジタル・マスター使用
より適正な回転数に調整された、最もオーセンティックなヴァージョン

『裁かるるジャンヌ』は、無声映画芸術の視覚効果やリズム効果の可能性を極限まで追求した前衛的な傑作である。原題は『ジャンヌ・ダルクの受難』。
1920年に聖処女ジャンヌ・ダルクが聖列に加えられ、同年から翌年にかけて、歴史家ピエール・シャンピオンが彼女の裁判記録を出版した。1926年、設立まもないフランスの製作会社ソシエテ・ジェラル・ド・フィルムはデンマークの巨匠ドライヤーにフランス史上の有名人の生涯の映画化を依頼。ドライヤーはジャンヌ・ダルクを題材に選んだ。事実上ドライヤーが単独で執筆した台本では、実際には5か月にわたって続いた裁判を、ジャンヌが処刑されたわずか一日に凝縮し、劇的な純化をめざしている。
撮影は、1927年5月17日から順撮りで進められ、火刑の場面は10月30日に撮られた。だが最後のいくつかの場面の撮影は手間取り、1928年4月初めにようやく撮影完了。製作には莫大な経費が投じられたが、フランスでは検閲による改変が行われた版が一般公開された上、当時の一般観客の理解を超える作品であったため、興行的には失敗し、製作会社の倒産を招いた。
ジャンヌに扮するルネ・ファルコネッティは舞台女優、モデルとして活躍していたが、生涯でただ一度の映画出演作である本作により映画史に記憶をとどめている。またアントナン・アルトーがジャンヌに同情的な青年修道士の役で出演している。すべての俳優はメイクなしで演じている。
この古典は、完成後まもなくオリジナル・ネガが火災により焼失。ドライヤーは海外に売るプリントを作るため、没テイクから第二版を編集したが、この版のネガも火災により焼失。その後、本作は半世紀以上のものあいだ、大幅に改変された不完全版で流通していたが、1984年にノルウェーのオスロでデンマーク語字幕の完全なオリジナルが奇跡的に発見された。本ディスクは、このオスロ版のインターネガから直接デジタル転写した世界初のDVDである。
1929年に日本で公開された版は英語字幕付きの第二版であった上、2003年のドライヤー特集上映の一環として日本で公開された完全版も、字幕をフランス語に差し替えた版であったため、世界プレミア版と同じデンマーク語字幕付き完全版のDVD化はきわめて貴重である。また、ランニング・タイムもより適正な回転数に近づけるよう配慮してあり、本ディスクは現在世界で最もオーセンティックなDVD版と言ってよいだろう。

原題 JEANNE D'ARC'S LIDELSE OG DOD