若き日に海での事故で首から下が不随となった男=ラモン・サンペドロ。彼が26年間自宅のベッドから動かずに過ごした苦しみの日々の末、みずから死を選んだという実話をもとに、彼の内なる声や関わる人々の心の葛藤を描いた物語。あらすじだけ聞けば本当に重く痛ましいものだが、観終わった後には不思議なくらい温かな気持ちになった。それは作品を〈お涙頂戴〉に終わらせないアレハンドロ・アメナーバル監督の冷静で優れた構成力に寄るところが大きい。だが何よりも女性たちを虜にさせる明晰さ/セクシーさを漂わせるラモンを、表情と声だけで完璧に演じたハヴィエル・バルデムが素晴らしいのだ。さらに、ラモンの家族や死を選んだ彼の意志を助ける人々も魅力的だ。この作品を観る人は、おせっかいで、頑固で、愚かで、優しい登場人物たちに親近感を抱くに違いない。彼らとラモンが感情を露わにして、時に反発しながらも、かけがえのない深い絆で結ばれていく過程が丁寧に描かれている。
また、監督自身が手掛けた音楽も秀逸だ。身体を動かせないラモンの唯一の愉しみであるオペラのレコードや、舞台となったスペイン北部ガリシア地方の伝統音楽を基調にし、ケルト界の雄カルロス・ヌニェスの奏でるバグパイプが際立つスコアは、一貫して死を描きつつも生を痛感させるこの映画に躍動感を与えている。人間とは生きることの意義を見つけるために他者と関わっていくもの。そんな当たり前のことに気付かせてくれる愛すべき作品だ。
bounce (C)長屋 美保
タワーレコード(2005年05月号掲載 (P104))
世界で絶賛されている、若き天才監督の新作サントラ!!
映画もサントラも、大おすすめ!!!
『海を飛ぶ夢』(2004)
サウンドトラック
音楽・監督 アレハンドロ・アメナバール
主演 ハビエム・バルデム
演奏参加 カルロス・ヌニェス
尊厳死を望み、戦う男と、彼を愛情を持って
見つめる女性たち。不思議な幸福感に包まれた
作品と音楽.いつも通り、アメナバール自身が
オーケストレーションまでもつとめたオーケストラ
音楽に、ガリシアのスター・ミュージシャン,
カルロス・ヌニェスの美しいパイプ演奏が加わり,
スパニッシュ・ケルトとオーケストラ音楽の、
優しい音世界が広がります。感動必至!!!
(C)馬場敏裕
タワーレコード(2005/04/09)