大会を勝ち進み、地元に活気を与えていたハイスクールのバスケットボール・チームが、突如試合放棄を決定。高校では練習場もロックアウト! 果たして、その真意とは!?
〈監獄か死か、スポーツか音楽か!〉。お馴染みのアフロ・アメリカンの刹那に正面から立ち向かうエデュケーショナルなスポーツ映画。モデルとなったのは99年に起きたリアル・ストーリーだ。新任鬼コーチのカーターが、選手たちとある契約を結ぶことで弱小チームを生まれ変わらせ、やがて彼らをアタリマエでホンモノの人生へと導いていく。
相次ぐトラブル、負け犬根性からの脱却、勝利の名誉……スポーツ映画ならではのスポ根要素やフィジカルな映像快楽はそのままに、特異なのが〈鬼コーチ=映画のありよう〉が、すべからくタクティクス的であることだ。論理的ゆえに起きる反発と軋轢、あまりにオトナなカーターと対称的であるがゆえメンバーたちの青く未熟な姿が際立つ。運動能力や才能は高水準とはいえ若手にすぎない役者のガキっぷりが、名優サミュエル・L・ジャクソンと絶妙のコンビネーションを描いていく。そこでは音楽界の姫様アシャンティでさえ、もはやただの小娘。躍動する身体のリズム&スピードを彩るはずのヒップホップ/R&Bも魂の未完を強調するかのように響き渡る。道徳的に過ぎる主人公への反抗心があってこそ生まれるカタルシスに、複雑だが得も言われぬ共感が湧き上がる。
bounce (C)山口 哲一
タワーレコード(2005年08月号掲載 (P124))
アシャンティも出演している、実在の人物をモデルにした映画のサントラ。これがかなりの充実度で、トゥイスタとフェイス・エヴァンスが絡むメロウな“Hope”を筆頭に、チンギー、シアラ、ファボラス、ブレイク中のゲーム、元デスチャのラトーヤ、今後に注目のラッパーであるレッド・カフェ、さらにはマリック・ユセフの隠れた名曲“Wouldn't You Like To Ride”(ここではカニエ・ウェスト名義)まで、内容の良さは保証します!
bounce (C)池谷 昌之
タワーレコード(2005年03月号掲載 (P68))