第10番は、ベルリンのフィルハーモニー・ザールでのライヴ・レコーディング。この公演は、正にあのNYテロ事件の直後に行われたもの(2001年9月12日)で、非常にエモーショナルな名演だったとの評判です。この演奏は、バルシャイ自身による「補筆完成版」で全曲にわたる編曲という意味でも重要。バルシャイと言えば、若い頃よりヴィオラ奏者としても名を挙げ、チャイコフスキー弦楽四重奏団の一員でもあった人。50年代後半以降、指揮者活動も活発となり、旧ソヴィエト国内外問わず幅広く活躍してきました。特に、76年のイスラエル亡命後は、西欧諸国のオケに多く客演しています。バルシャイの指揮は、極めて緻密にして高度に緊張感を孕んでおり、とても独創的。そして、この人の編曲者としての不朽の実績は、何と言ってもショスタコーヴィチの室内交響曲(SQ No.8より)！この曲は最早スタンダードな確固たる地位を確立しています。また、かれのショスタコーヴィチ交響曲全曲録音[Brilliant]も文句無く名演揃いでした。そうした中での本作の登場だけに、間違い無く必聴盤でございます。カップリングは、第5番！彼の手による”アダージェット”、そして最終楽章のお手並みの鮮やかさに好奇心を持たずにはいられない事でしょう。こちらは、97年9月9日の演奏です。オケはユンゲ・ドイチェ・フィル。Brilliantレーベル的なプライス設定も嬉しい限り。クラシック・ファン大注目の新譜でございます。

タワーレコード （2009/04/08）