眺めがいいオンガク。そこにテナー・サックスがあってギターがあってドラムがあって……そんなごく当たり前の光景に胸騒ぎを覚えずにはいられない、この〈ブラサキ〉のファースト・アルバムには普段忘れがちな肝心な何か、つまりとっても素敵なアレが詰まっている。アレってのは……と考えていると、無骨な音の塊が猛スピードで追いかけてきて、頭と身体はハラハラでクタクタに。ジャンプ、スウィング、どの演奏もスッ飛ばしている。彼らにはナンセンスさをスピードでもって納得の領域へと運んでいくガムシャラな勢いが備わっているのだ。まるで中平康の映画のように。どんなドアでも蹴破って入る彼らの習性、それは“Soul Bossa Nova”や“Calling You”のカヴァーに如実に表われていて、やたらおもしろい。スタジオの空気感をビシッと捉えた録音も良く、マイクの置き方がグーっす。すばらしき仲間たちの咆哮が夜空を焦がす。
bounce (C)桑原 シロー