アウトキャストやグッディー・モブ他、アトランタの音楽シーンを仕切るダンンジョン・ファミリーの怪人、シー・ローのセカンド・アルバム。ダーティ・サウス系ヒップ・ホップ、1970年代ソウルが特徴の1枚。 (C)RS
JMD(2010/06/14)
こういう作品が聴けるのは幸せなことだ。そりゃあ旧友アウトキャストの2枚組も、シー・ローにとって刺激にはなったろう。けれどもこの凄み、外から突っつかれて出てくる類であるものか。ぶっとい足を地につけておればこその、万華鏡の美しさ、でしょ。思えば初ソロとなる前作での彼は、全曲を自身で手掛けてポテンツぶりを示したものの、ある種のファンク・フォームに拘泥したきらいもあった。パンチも洒落も利いていたあの作品には、微妙な閉塞感も嗅ぎとれて、グッディ・モブの90年代をひきずるようにも見えたのだ。だが今回の風の通り具合はどぉだ。彼自身の制作曲はもちろん、ネプチューンズ、ティンバランド、ジャジー・フェイ、DJプレミア、リュダクリスなど人選面のトピックにしても、まずシー・ローの開いたマインドありき、なのは作品を聴けば瞭然。南部ソウル調サイケ、肉厚な近未来エレクトロ、ヒステリックな毒入りゴシック調、などなど無数のアイデアが、骨太で鮫肌なストリート・ファンクへと集約されて下半身に粘りつく。質・量ともに上昇したヴォーカルものでの、タフでマッチョな〈ソウル吟遊詩人〉ぶりにも惚れぼれだ(ネプのファレルも活躍)。緩急自在に生み出されるここでのファンク群は、聴き手との共振関係でも威力を発揮しうる、開放的な双方向性ファンク。刺激とエンタメ性が高レヴェルで合体した、めったになくヒップで痛快なアルバムなのだ。聴いとくべし。
bounce (C)出田 圭
タワーレコード(2004年04月号掲載 (P70))
前作を聴いたときに〈ジャンルを問わず誰でも好きになれるアルバム〉だと思ったりもしたのだが、ソロとしてはセカンド・アルバムにあたる今作もまた幅広い層に刺さるであろう〈音と声〉が詰まっている。例えば、収録曲中もっともキャッチーな“The Art Of Noise”はネプチューンズがプロデュースし、軽快にスウィングするトラックの上でファレルのファルセットとシー・ローが絡み合う一曲なのだが、ここでのシー・ローの〈なんかわからんけど変な声!!〉といった感じの、ドス黒い中毒性を持った声。この声の魅力に抗うことのほうが難しいのではないだろうか。じゃあ、“All Day Love Affair”など数曲で聴くことのできる甘い声はどうだ。その、ただ純粋に〈いい声〉は、誰しもを無差別にトロケさせるだろう。ということで、膨大な世界観がシー・ローという希代のキャラクターを通して表現された前作と比べると、今作はよりラッパー/シンガーとしての彼の魅力をストレートに体験できる作品であることは確か。結果、彼の強烈なキャラクターというものもよりダイレクトに伝わってくるわけで、ダンジョン・ファミリーやグッディ・モブを知らない方々でも絶対に今作を楽しめるはずだ。そういえば、今作についてシー・ローは「もし前作を聴いて誤解した人がいるんだったら言っておくけど、俺はそんなに難しい人間じゃないよ」と話していた。つまりはそういうことなのだ。ほら、左の写真でも彼は〈俺っておもしろいだろ?〉って言ってる……ような気もするんだけど、どうかな?
bounce (C)大石 始
タワーレコード(2004年04月号掲載 (P70))