2000年のTMCからツアーサポートとして参加してきたギタリスト、HIROKIが加入し、さらにヴァージョン・アップしたDragon Ashの2年4ヶ月ぶりのオリジナル・アルバム。オルタナ、ヒップホップ、ハードコア、アシッド・フォークなどストリートの要素を丸呑みにした雑食性の高い全17曲を収録! (C)RS
JMD(2010/06/14)
Dragon Ashは「週刊少年ジャンプ」であった……て、いきなり言われてもって感じですよね。つまり〈努力、友情、勝利〉といったいわゆる男の子(少年)的価値観を地でいくコンセプトのもと、ひたすら目の前の敵を倒しては進み、また倒しては進む、という具体的なイメージ。それは爽快極まりない男の子の冒険譚を共有する楽しさだ。しかし、昨年初頭のシングル“Life goes on”によってさらに巨大な存在となったDragon Ashは、直面したさまざまな問題によってその歩みを急速に弛める。前作より実に2年4か月ぶりとなる本作を聴いて、もう〈Viva La Revolution!〉と叫ぶ人はいないだろう。しかし、それでいい。『HARVEST』は攻撃的な側面よりも内省的な側面の強い作品だ。随所で爆発するスラッシュ・ギターよりも全編に散りばめられたスペイシーなSEや、多くをドラムンベース寄りのアプローチが占めるリズム、何曲かで色濃いレゲエの影響、などが印象に残る。しかしそのしなやかで軽やかで抽象的な質感がとにかく新鮮だ。それは男性的というより女性的というべき感覚であり、本作ではkjがもともと持っていたそんな繊細な資質をたっぶり楽しめるからこそ素晴らしい。そう、Dragon Ashはいま、次から次へとダンジョンを突破しないかわりに男の子の挫折とそこからのリスタートを静かにドキュメントする。その意味で、『HARVEST』はこのうえなく魅力的な処方箋であることは間違いないのだ。
bounce (C)内田 暁男
タワーレコード(2003年08月号掲載 (P78))
最先端の音楽マニアを自称する人から見ると、たぶん全然遅い。しかし、ポピュラー・ミュージックを日常の楽しみとする大多数の音楽ファンにとっては、十分に早い。ロック・フィールドにおけるDragon Ashのポジショニングは常に絶妙で、それを変わり身の速さという、嫌味な言葉で片付ける意見に僕は与しない。初期のオルタナ・ロック期しかり、その後のヒップホップ期しかり、確かに少々はしゃぎすぎの時もあったとは思うが、基本的には誠実に、リスクを負った冒険を積み重ねてきたという事実は揺るがない。その延長線上にあるのがこの新作で、ひとことで言えば、クールな倍速ブレイクビーツとホットなロック・バンドとの融合である。最近のkjの発言から推し量るに、もともと好きだったアンスラックスなどのスラッシュ・メタル的な快感と、ドラムンベースなどのダンス・ビート、ヒップホップを通過したブレイクビーツのループ感覚、アシッド・ジャズなどが混ざり合った音、ということになるようだ。やるとなったら全面的にやるのが彼のいいところで、思い切りの良さがこの広がりのある濃密な音楽空間を生んだ。「耳で聴こえる3倍くらいの音が入ってる」というkjの言葉どおり、情報量の多さにもかかわらず難しく聴こえないし、激しいのに痛くはない。美しい明日をめざして日々進めという、穏やかな祈りにも似た歌詞も、今の時代をしっかりと捉えている。変革と熟成を兼ね備えた傑作である。
bounce (C)宮本 英夫
タワーレコード(2003年08月号掲載 (P78))