リスト

反田恭平

リストを最も好む僕が、聞いていて最も感動したアルバムの一つです。この選曲からはリストのダイナミックかつデリケートな面を共に感じ取ることができるので、アルバムでリストを聴くときはまずこれを選びます。以下、二つの曲を選んで詳細な感想を書きます。華美さ、繊細さを兼ね備えたリストの魅力と、それを正確に表現する反田さんの魅力が伝われば幸いです。
　愛の夢
まず初めに美しい情景が浮かび、徐々に全体をゆっくりと見回すように展開する。その後一度静寂が訪れた後、ドラマチックでありながらも儚い場面が描かれ、また最初のフレーズに戻り、ピアニッシモで結ぶ。愛の持つ暖かみや切なさをしっかりと捉えたこの曲を完璧に表現している反田恭平さんの演奏が琴線に触れました。
マゼッパ
最初に稲妻が背中に走ったような衝撃を覚える。力強く激しく疾走していくと、一面に金色の平野が広がる。一時の安らぎを得たかと思えば、そうはさせまいと言わんばかりの勢いで主題に戻ってくる。そこには勇敢なコサックの姿がある。これが時の権力者に反抗する勇気を持った英雄の姿なのだと、雄大な音楽で幕を閉じる。不屈の闘魂をもって生きようとするマゼッパの勇猛な人生を、力強く激しいタッチと繊細なタッチの巧みな使い分けで表現している彼の演奏に心を打たれました。