名演の宝庫!
ロシアものの大家として知られるスヴェトラーノフだが、意外にもドビュッシーは得意レパートリーである。近年では、スウェーデン放送響への客演(Weitblick)も復刻されたし、勿論、手兵のソビエト国立響とも録音が存在する。
当盤の録音のうち、ドビュッシーは、これらの何れより近年に当たる2001年3月15日のライヴである。つまり死の前年の演奏という訳だ。
圧巻は《牧神の午後》で、普通9〜10分程度で奏でられるところを13分以上もかけて演奏している。この曲の持つエロティシズムを、噎せ返らんばかりの濃厚さで表現しており、いわゆる「フランス系」の演奏が物足りなくなるほどの蠱惑的な演奏である。
ドビュッシー以外はロシアものであり、スヴェトラーノフにとっては自家薬籠中と言えるものだ。ラフマニノフの《海と鷗》など、《死の島》のような心悲しさを持っているし、《市》では一転、光彩陸離たるまさに「音の絵」を観ることが出来る。
録音自体も、1979〜2001年と年代に幅があるが概して良好。つくづく、凄いものを甦らせたものだと思う。