Sul America -南米ピアノ作品集-

三舩優子

これがはたして南米音楽かと思わせるような、洗練された透明感と凛とした美しさに溢れたピアノ小品集。ピアニストの三舩優子は、南米音楽の大家の作品を、歯切れのよいタッチと強弱をつけた明確なバランスや軽快なリズムで、曲の構造が手に取るようにわかる音楽に仕上げている。普段クラシックをあまり聞かない人も含めて、どんな聴き手の心も癒してくれそうな、お奨めの一枚である。

ベル･エクサントリック～林美智子ベル･エポック歌曲集～

林美智子 (mezzo soprano)

収録曲中では、とりわけ同じ歌詞で２つの異なる作曲家による「カディスの娘たち」が面白い。他にも「エレジー」のような存分に物悲しい雰囲気の曲もある一方で、「アイ・リュリ」のような明るく生気に満ちた曲もあるなど、さまざまな曲想の小品が収録されており、１枚のアルバムで、多様な色彩を帯びたベル・エポックの作品を贅沢なまでに存分に堪能することができる、洗練された稀有な作品集である。

サン=サーンス:ヴァイオリン作品集

瀬﨑明日香、他

間近でライブを聴くような刺激的な演奏である。瀬崎は温かく人間的なぬくもりのある、しかも情熱がほとばしる、力の漲った演奏を貫いていると同時に、スリリングな迫力、情緒的なメロディー、抑揚の激しさや重厚感など、サン＝サーンスのソナタのもつ醍醐味を余すところなく反映させている。同じく収録されている「序奏とロンド・カプリチオーソ」はイントロから、女性奏者ならではのたっぷりと妖艶な演奏が聴ける。

イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ op.27(全曲)

瀬﨑明日香

瀬崎明日香のヴァイオリン演奏は、堅苦しさや重々しさなく流麗で軽やかな聴きやすいものに仕上がっている。強弱のメリハリも明確であり、何より曲の運びが良い。しかも演奏自体は繊細そのもので、音一つ一つの響きに実に配慮されている様子がうかがえる。イザイの６曲のソナタのそれぞれの楽章が持つ、起伏に富んだ曲想の楽しさや面白さ、創意工夫があらためて発見できる、クラシック現代音楽の初心者にも十分お薦めできる一枚。