グールドによるバッハの《ゴールトベルク変奏曲》が20Cのピアノ演奏史上の事件なら、モルテーニによるベートーヴェン=ウィンクラーの《大フーガ》は21Cのピアノ演奏史上の事件だ!!!
待望久しかったピアノ・ソロ版《大フーガ》の名演の登場!!!ベートーヴェンの最高傑作《大フーガ》の2台ピアノ版によるCDは数多あったし、二重録音的なピアノ・ソロ(?)版(メラー盤)もあった。しかし、残念ながら、《大フーガ》の構造を何とかなぞっただけのような、凡百な演奏ばかり。
圧倒的な、モルテーニによるベートーヴェン=ウィンクラーの《大フーガ》!!!ベートーヴェンの脳裡に鳴り響く音楽は、ベートーヴェン自身により、《弦楽四重奏》の形で産み出されたが、ウィンクラーによるピアノ・ソロ版は、ある意味、ベートーヴェンの脳裡に鳴り響く音楽の神秘的なまでのルプレザンタシオン(表象/再-現前)である。そして、それはまた、正に、偉大なベートーヴェン像である。「英雄的なばかりでなく驚異的でもある」(ライナーノーツ)モルテーニの演奏!!!実際、モルテーニの演奏よりも、遅くても速くても、強奏的でも弱奏的でも、ベートーヴェンの音楽の本質は再現され得なかったであろう。モルテーニによる、虚空に煌めくかのようなスタインウェイの高音の美しい響きや、複雑なフーガの音響の塊は、ベートーヴェンの創造する小宇宙を大変見事に再現し得ていると思う。
ブレンデル、ポリーニ、カツァリス、ブッフビンダー、シフ、コルスティック達のベートーヴェン像を凌駕するかのような、燦然と輝くモルテーニによるベートーヴェン=ウィンクラーの《大フーガ》!!!
モルテーニによるような真正なベートーヴェン像を、R.ロランやT.マンやアドルノやサイード達も聴きはしなかったかもしれない。彼らとは違い、21Cの我々は、モルテーニのお陰で、真正なベートーヴェンの偉大な音楽を体験できる。モルテーニによるベートーヴェン=ウィンクラーの《大フーガ》は、実に偉大なモニュメントである!!!