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【第4回】――アトムス・フォー・ピース

連載
生形真一の六弦生活
公開
2013/04/23   18:15
更新
2013/04/23   18:15
ソース
bounce 353号(2013年3月25日発行)
テキスト
インタヴュー・文/溝口和紀(New Audiogram)


ひたすら六弦生活を送る男が、ギタリスト目線も交えて名盤を紹介する連載!



生形連載第4回_A



【今月の一枚】ATOMS FOR PEACE 『Amok』 XL(2013)

まず聴いた率直な感想は、完成度も高いし、流石だなと。アトムス・フォー・ピース結成のキッカケになったトム・ヨークのソロ・アルバム(2006年作『The Eraser』)も聴いてたけど、レディオヘッドという世界的なロック・バンドのヴォーカリストがこういう音源を作ってくれるのは、俺たちロック・ミュージシャンにとってすごい誇らしいことだと思います。

俺らも目標としていることなんだけど、過去を恐れないというか、一回完成した音楽スタイルを崩してまったく違う音楽をやるというのは勇気の要ることで、それまでの成功の規模が大きければ大きいほど怖いと思うんです。いままでバンド・サウンドでやってきたのに、『Kid A』(2000年)というアルバムを作って。いまとなってはあたりまえの音になっているけど、あの当時は〈この音楽は何だ?〉って思った人がたくさんいたわけで。常に新しい音楽を生み出す姿勢もすごいですが、それをきちんと作品としてまとめ上げているところもすごいんですよね。

今回のアトムス・フォー・ピースのアルバムもそれぞれの曲のなかでいろいろなジャンルの音楽が混ざっているし、聴いたことのない音もたくさん入ってる。ひとつひとつの音色が研ぎ澄まされていて、音作りにものすごい時間がかかっていると思います。

リズムも独特で、ミニマルでレンジの狭い音なんだけど、小さくまとまることなく踊れるビートになっている。そこが、聴く人を選ばないいちばんデカイ部分だと思います。メロディーもわかりやすいサビがあるわけじゃないけど、それに対してノリのいいビートで、同じようなコード進行でもちゃんと展開がついていて、ただループしているだけじゃないのが最大の特徴ですかね。そんななかに入ってくるギターのフレーズもいちいちカッコイイんですよ。音もすごくいい。ギターのリフがループしている曲なんかを聴くと、やっぱりトム・ヨークも根本はバンドマンなのかなと嬉しくなりますね。

このアルバムはもはやロックという括りではないと思うけど、普段あまりロックを聴かない人が聴いたらどういうふうに思うのか、すごく興味があります。他のジャンルのことは詳しくは知らないけれど、いまあるさまざまな音楽を見回しても、こんな新しい音楽はなかなかないと思うので。

【お知らせ】感想をお待ちしています。宛先はこちら(bounce@tower.co.jp)! オフィシャルブログ〈www.newaudiogram.com/blog/ubu/〉も随時更新中です!!



PROFILE/生形真一



Nothing's Carved In Stoneのギタリスト。最新シングル“Out of Control”(エピック)が好評リリース中。そして現在は、次のアルバムを絶賛制作中です! その他の最新情報は、オフィシャルサイト〈www.ncis.jp〉をチェック!!