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連載/コラム

(第9回)ガールズ・アノラック・バンドの筆頭、ショップ・アシスタンツ

連載: 岡村詩野のガール・ポップ今昔裏街道

掲載: 2013年02月26日 17:00

更新: 2013年02月26日 17:00

文/岡村詩野



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ライター・岡村詩野が、時代を経てジワジワとその影響を根付かせていった(いくであろう)女性アーティストにフォーカスした連載! 第9回はガールズ・アノラック・バンドの筆頭、ショップ・アシスタンツをご紹介



パステルズの新作がとうとう春に出るそうです。ティーンエイジ・ファンクラブもヴァセリンズもベル・アンド・セバスチャンも、このバンドがいなかったら誕生しなかったのでは?と言っても過言ではない、スコットランドのカリスマ的存在のギター・バンドである彼ら。滅多に新作が出ない、出る出ると言って出ない、という稀少性、伝説性においてはマイブラと双璧を成すほどのバンドなので、そのマイブラに続いてついにこちらの〈スコティッシュ・ゴッド〉も……ということで非常に期待しています。

考えようによっては絶妙のタイミングかもしれません。というのも、それこそシューゲイザーを名乗るマイブラ・フォロワーが多いように、パステルズ・フォロワー……というか〈アノラック・サウンド・フォロワー〉とも言える若手バンドがとても多いから。例えば、ブルックリンのヴィヴィアン・ガールズを筆頭に、ヴェロニカ・フォールズやスクール、アロー・ダーリンなど、ジャングリーで粗削りなガレージ・パンク風のギター・サウンドに、人懐っこくでキャッチーなメロディーを掛け合わせた若手バンドが英米から多く登場してきているのに気付きます。

〈アノラック〉とは、高地の寒い地域であるスコットランドの人々がよく着用しているフード付きの防寒着のこと。確かに、ティーンエイジ・ファンクラブもヴァセリンズもBMXバンディッツも、初来日時にはメンバーの多くがこれを着ていました。そんな服になぞらえて誕生したアノラック・サウンドが、いまなお……いや、それどころかここにきて再度プチ・ブームを引き起こしていることは、前述した英米の新鋭たちの活動を見てもわかること。UKでは近年、夏に行われる〈Indietracks〉というインディー・ポップ系のバンドが出演するフェスティヴァルも話題になっています。

これらアノラック・サウンドをいまに継承する若手バンドの傾向として、ひとつには女性バンドが多く見られることが特徴かもしれません。ミニスカートを履いた可愛い女の子が自身の身体ほどに大きなエレキ・ギターをジャカジャカと鳴らして、舌足らずな歌を聴かせる姿――ヴィヴィアン・ガールズの来日公演を観た時、このアンバランスな危うさにガールズ・アノラック・サウンドの魅力があるんだろうなあと感じたものでした。そういえば、ミニスカで登場したケイト・ナッシュの新曲もモロにアノラックでした。

そこでふっと思い出して、今月紹介しようと決めたのが、スコットランドのエジンバラ(ヴァセリンズと同じですね)で80年代から90年代にかけて活動していた女性3名、男性1名から成る4人組、ショップ・アシスタンツ。スティーヴン・パステル(パステルズ)がかつて運営に関わっていたフィフティーサード&サードや、いまなおコアな人気を集めるサブウェイなどのインディー・レーベルからシングルを出した後、86年には何とメジャー・デビューも果たした知る人ぞ知るバンドです。86年といえば、イギリスの音楽誌・NMEが編纂したレジェンダリーなオムニバス・アルバム『C86』がリリースされた年。ショップ・アシスタンツもパステルズやプライマル・スクリーム、ウェディング・プレゼントらと共にこの作品にも参加していました。

初期パステルズがそうだったように、このバンドも決して演奏力は高くありません。学生バンドがスタジオで初めて自己流に音を鳴らした時のフレッシュさがそのまま封じ込められたような、無垢な魅力があります。ただ、脱線して転がっていってしまうんじゃないかと思えるような危なっかしさのなかから、計算では絶対に生まれないようなメロディーが自然発生的に聴こえてくる、その奇跡的な音の作りには当時何度もワクワクさせられました。

一方で、後にプライマル・スクリームのファースト・アルバム『Sonic Flower Groove』を手掛けるレッド・クレイオラのメイヨ・トンプソンにプロデュースを依頼したりと、先見の明もあった彼ら。90年代には残念ながら活動はフェイドアウトしてしまいましたが、そのメイヨによるプロデュース音源も含むショップ・アシスタンツのコンピ『Will Anything Happen』を聴くと、タルーラ・ゴシュ(後のヘヴンリー)、フラットメイツらと並ぶこの時代の〈ガールズ・アノラック・バンド御三家〉の筆頭である彼らの作品が、ガレージーで粗削りのギター・バンドというだけではない、しっかりとしたソングライティングに裏付けされたバンドだったことに気付かされます。ロネッツが下手っぴなガレージ・バンドになったような、スリリングなポップネスがこのバンドの神髄だったのです。

ところでこのショップ・アシスタンツのただ一人の男性ギタリストは、後にパステルズのサポート・メンバーとなり、来日も果たしています。繰り返しになりますが、そんなパステルズの新作は5月には届くそうな。今年は春から縁起が良さそうです!



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