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連載/コラム

第8回:ピストルさん編

連載: アイドルのいる暮らし

掲載: 2012年11月16日 21:30

更新: 2012年11月16日 21:30

文/岡田康宏(サポティスタ)



平日のライブ会場やショッピングモールで行われるイベントで、いつも見かける大人の姿がある。けっこういい歳してるけど、この人たちはいったいどんな生活をしているのだろう?

大人のアイドルファンは、アイドルファンであるだけではなく日常を生きる社会人でもある。お金も暇もある大人のオタクには、元気なだけの若者にはない深みと趣きがある。ライフスタイルとしての現場系アイドルファン、大人のオタクの遊び方とは?



今回お話を伺ったのはピストル(@dijpistol)さんだ。40代半ば、職業不詳。180cmを優に超える巨漢で金髪にサングラス、現場でも一際目立つ彼はいわゆる有名オタの一人だ。今ではすっかりDDとなった彼だが、もともとはハロプロファンサイト〈娘。楽宴〉(※注1)及び〈亜依国精神〉(※注2)の管理人で熱狂的な加護亜依ファンだった。リア充からハロヲタへ、そしてDDへ。謎多き有名オタのサングラスの奥に隠された半生に迫る。
*注1 娘。楽宴:01年8月開設のハロプロファンサイト http://www.m-rakuen.jp/
*注2 亜依国精神:加護亜依に関する文章を綴っていたテキストサイト 
http://dijpistol.pussycat.jp/



ハロプロ以外は認めない。加護ちゃん以外は認めない



〈娘。楽宴〉を立ち上げたのは、ちょうど、2ちゃんとか狼ができたくらい。そのころはまだオフィシャルサイトもなければハロプロショップもない。公式に情報を出すところがなかったんですよ。ASAYANの掲示板があって〈グッドモーニング〉(※注3)という老舗の第一人者のサイトがあって、そこがだいたいファンの情報源だった。
*注3 グッドモーニング:モーニング娘。誕生当初からある老舗ファンサイト。04年1月閉鎖。

僕らは〈グッドモーニング〉の住人だったんですけど、もうちょっと自由に自分たちでやれるところを作ろうってことで「娘。楽宴」を立ち上げたんです。サイト自体は自分が声をかけて6人、7人ではじめました。2001年8月にオープンしたので、5期メンバーとほぼ同期ですね。

その中で〈亜依国精神〉という加護ちゃんのことを熱く書くページをはじめて、僕は現場に行って自分の顔も晒すので「ピストルがいたぞ」みたいなのがネット上でどんどん広まっていって、加護ちゃんのファンの間で認知されはじめて。「とにかく加護ちゃんが一番」って感じの文章をずっと書いてたので、他の推しの人には「ピストルって嫌な野郎だな」と思う人も居たり、同じ加護ちゃん推しでも煙たがる人も居たし、逆に慕ってくれる人なんかもでてきて。一番広まったのはW時代かな。

いわゆる「狼脳」(※注4)というのがあるじゃないですか。ハロプロ命みたいな。〈我が軍思想〉(※注5)とか。もともとは僕もそちら側の人間でした。もし加護ちゃんがタバコでクビになることなく、今もハロプロに在籍して活動してたら、ももクロだろうとAKBだろうと今でも敵として叩いてますよ(笑)。あの頃は「ハロプロ以外は認めない。加護ちゃん以外は認めない」という感じだったから。
*注4 狼脳:2ちゃんねるにおけるモ娘(狼)板の住人の典型的思考回路のこと。「狼は2ちゃんじゃない」を共通認識としてもつ。2ちゃんねるには他にハロプロ専門板としてモ娘(羊)、モ娘(鳩)があるが、それらに比べて(狼)板の住人は当時2ちゃんねる一の人の多さ、独特の文化、スレッドテーマの幅広さ、凶暴な叩き合い等をもって怖いという印象を持たれていた。
*注5 我が軍思想:ハロプロ所属グループや、ハロプロに対して好意的な発言をした人物などを〈我が軍〉として持ち上げる一方、それ以外のグループなどを叩いていく、という一部のファンに見られる傾向を揶揄した言い方。

今だと当時〈亜依国精神〉を見ていましたっていう人は多くて、(AKB48の)ゆきりん(柏木由紀)や指原(莉乃)はハロヲタだったから〈娘。楽宴〉は見ていたし、握手会でピストルって名乗ったら「ああ加護ちゃんの」と知っていてくれたのは嬉しかったですね。タワレコの嶺脇社長とかもそうで。渋谷のタワレコでWが初めて握手会をやったときに、俺が駅からタワレコに向かって走ってる姿を目撃したとかね。

〈Ayaya-Style.〉(※注6)の樋口さん(悪竜さん)なんかもそうですね。樋口さんはかっこいいんですよ。アヤスタは人気サイトだったんだけど、辞めるときに、もうファンサイトとしてはやりきったので今度はぼくの昔からの夢である自分の手でアイドルを作ることを目指します、みたいなことを書いて閉鎖したんです。その頃は、「なに言ってんだこの人は」とか思っていたんですけど、実際にそのあとavexに入って、毎年毎年企画書を出して、今はiDOL Streetのプロデューサーじゃないですか。あれからちゃんと自分の夢にたどり着いたのはすごいなと思います。向こうはスパガのプロデューサーで、〈娘。楽宴〉をやっていた僕は、今でもこんな感じなんですけど(笑)。
*注6 Ayaya-Style.:01年開設の松浦亜弥ファンサイト。管理人だった悪竜さんは現・iDOL Streetプロデューサーの樋口竜雄さん。

2006年2月、加護ちゃんがタバコを吸って謹慎になった時に僕もしばらく活動を停止して。翌年に復帰するっていう話になったんですけど、またタバコでダメになっちゃって。そのあと、2007年の5月6月ごろからDD活動をはじめました。〈亜依国精神〉は加護ちゃんのことだけを書いていたので、日記は書かなくしていたんですよ。そしたら知り合いに、日記を書いて欲しいから他のでいいから始めればと進められて、2007年の7月くらいに立ち上げたのが〈なれのはて〉(※注7)です。それからはずっとDD活動を続けていますね。最初の頃はまだハロプロに対するこだわりがあって、まずはつんくプロデュースのキャナァーリ倶楽部、ポッシボーに行って、段階を踏んで徐々に自分の中の縛りを外していった感じ。ハロプロ縛りを外して、つんく縛りを外して。最後の最後に一番ハロプロオタが嫌っていたAKBに行って。そしたらおもしろくてね。
*注7 なれのはて:ピストルさんが07年から始めたアイドルDD日記。http://dijpistol.pussycat.jp/narenohate.html

初めて行ったのは07年12月、チームBのセカンド公演。ちょうどその頃、ひまわり公演(※注8)とチームBをやっていて、チームBならあまり並ばずに買えるよといわれたので、じゃあ最初は、チームBでいいかと。一発でいいなと思いました。ライブが座りなので最初はそこに抵抗があったんですけど、座ってじっくり見るのもいいなと思って。くじ運が良くて、センターの3列めくらいに座れたんで。最初から最後まで、すごい良かったんですよね。そこで初めてAKBを見て、2008年はAKBにどっぷりでした。最初は並びで入れたし4月頃からメール申込になったんですけど、チームBなら当たりましたからね。2008年だけでも、100回くらいは見たんじゃないかな。
*注8 ひまわり公演:当時のチームAとチームKの合同チーム「ひまわり組」の公演のこと。07年7月から11月末まで開催。



加護ちゃんはキレイには終われなかったからファンも成仏できない



アイドルにハマったのは「ASAYAN」からですね。とんねるずが好きだから、高校生時代、普通に「夕やけニャンニャン」とか、「オールナイトフジ」とか見てましたけど、アイドルが好きってわけではなかった。80年代のソロアイドルや、おニャン子クラブなどが盛り上がってた時代に思春期を過ごしましたが、アイドルにはまったく興味が沸かず、ロックや洋楽ポップス一辺倒でした。

「ASAYAN」はドキュメンタリー番組を楽しむ感覚で見てましたが、娘。から福田明日香が抜けたときに、CDの売上も落ちていたし、番組での取り上げられ方も地味になってきていて、やばいな、どうなっちゃうのかなと思ったんですよ。で、次の3期のオーディションで後藤真希が出てきて。後藤真希が映った瞬間ですよね、これはすごいって思って。それがモーニング娘。を好きになった瞬間です。

そこからCDを買って、ファンクラブにも入って、チケットを買って、ライブを見に行くようになった。それまではお金を使ったことがなかったけれど、そこからはグッズも欲しくなったし、それがただの好きからファンになったってことなんだろうなと。

最初にコンサートに行くときは抵抗ありましたよ。それまではアイドルとか応援している人を馬鹿にする側にいたから。テレビの前の人がイメージするアイドルオタクを俺もイメージしていたんで行くのが嫌だったんですけど、行ってみたら居心地が良かったんですよ、俺、ここは肌が合うなと(笑)。一緒にサイリウムを振るのも楽しいし、当時はオタ芸もなくて、みんな自由にやっていたから。中学高校の頃から現場派でロックのライブとかには行っていたけれど、あんなに自由にお客さんがはしゃいでいる現場って、ロックのライブでもなかったんですよね。好きな子の名前を大きな声で叫ぶって気持ちいいなぁって。普段の生活じゃできないことじゃないですか(笑)。

現場デビューしたのは99年だから29歳のとき。20代のころはアイドルなんて全然興味がなかった。でもそういう人って多いんですよ。モーニング娘。からアイドルに入った人。ラブマ(LOVEマシーン)世代。ダンス☆マン(※注9)の曲から入った人も多くて。今までアイドル興味なかったけど、音がかっこいいからって。そこに惹かれた人ってあの時代のファンには多いんですよね。
*注9 ダンス☆マン:ミュージシャン/アレンジャー。モーニング娘。楽曲では“LOVEマシーン”“恋のダンスサイト”“恋愛レボリューション21”“ザ☆ピ~ス!”“そうだ! We're ALIVE”などの編曲を手がける。

単純に当時の盛り上がりに乗ってファンになった人は、その盛り上がりが終わってしまえば去っていくんだけど、音楽で好きになった人は、つんくサウンドが好きだから、その後、あややに流れて、ベリ(Berryz工房)、℃-uteに流れてって感じで所属先を変えるだけでハロプロの中に留まるパターンって多いんですよね。あとは特別に1人の子だけが好きになってしまって、なっちが辞めるまではモーヲタ続けるという人とか。卒業と同時にフェードアウトって多いじゃないですか、やりきった感があるから。卒業と同時に普通の生活に戻ります、みたいな人も何人も見てきたけれど、僕の場合はキレイに卒業できなかったから(笑)。

なっち推しとかはちゃんと卒業して次の人生に行っている人が多いですよ。でも加護ちゃんはキレイには終われなかったから成仏できてない人が多いんですよね。綺麗に最後の舞台を見届けることができずに、振り返ればあれが最後だったっなぁっていうのが一番厳しいですね。見送れないのは一番ひきずってしまうパターン。でも、そういう人のほうが多いですけどね。キレイに卒業式で送り出せるアイドルなんて一握りだと思うから。卒業式があると、自分も一区切りってなるけれど、そうじゃないと気持ちの整理がつかない。石川梨華は卒業が発表されたのが1年前なんですよ。そうすると、本人もファンもそこに向けて思い出作りをずっとしてきて、やりきって辞められるじゃないですか。新垣里沙なんかもそうですよね。最後にバスツアーをやって、ここが最後の握手になるんだなあと1つ1つ確認しながら進んで行けて、最終的に気持ちが上り詰めたところで武道館のライブを迎えられる。ファンも一緒に燃え尽きることができますよね。トラブルで辞めちゃった子は、それが無いのでスッキリしない。



加護ちゃんで会社辞めました



2004年にWができてBerryzと一緒に夏のツアーをしたんですよ。翌年のツアーもBerryzと一緒だったり、メロン記念日と一緒だったりとか。今では考えられないんだけど、Wだけのツアーって結局一回もやっていないんです。当時からそれが不満で、なんでいつまでも抱き合わせんだよって。Wのファンの中にはずっとそういう不満があったから、オレが発信しないとダメだって。事務所に対する文句とかをずっと言っていたんです。で翌年、3rdアルバムの発売が決定して、ハワイツアーも決まって、これで単独ツアーも来るだろうって時に例のFRIDAYが出ちゃったんですよ。ショックがでかかったですね。友人には濃いオタがいるんで、実家まで行ってお母さんと話してきたという人とかいて、「戻る意思はあるんだけど、いつになるかわからない」とか聞いてきたり、来年2月ごろに戻ってくるらしいという噂があったり、年が明けて1月の横浜アリーナのハロコンを見に来ていたという情報があったり、だんだん復帰が近づいてきているなという感触はあったんで。戻ってきたら、この1年間の鬱憤もあるから、加護ちゃんの現場全部行きたいなと思って、会社を辞めようと思ったんですよ。それで4月いっぱいで辞めますって辞表を出して。

その1か月後ですよ。2度目のタバコで事務所を解雇になっちゃったんですよね。会社の人間は加護ちゃんオタだってことも知っているんで、大丈夫なんですかって言われたんですけど、そのまま会社は辞めました。だから、加護ちゃんはタバコで会社辞めてますけど、僕は加護ちゃんで会社辞めてるんです(笑)。世間で思われているほど、加護ちゃんはいい子じゃないよというのはわかっていたし。そういうふうにブログでも書いてたのでタバコを吸っていたこと自体は平気だったけれど、姿を見れなくなちゃうのは辛かったですよね。ずっと加護ちゃん中心の生活を過ごしてきたので。

最初の1年は残った辻ちゃんを応援していて。辻ちゃんはガッタスをやっていたから、ずっとガッタスの応援に行っていて、一緒に加護ちゃんの復帰を待つっていうスタンスで行っていたんだけど、翌年、2度めのタバコで、これはもうハロプロで見るのは無理だなと。ただ本人のやる気さえあれば、ほかの事務所とかで戻ってくることもあるのかなと。加護ちゃんのせいで、辻ちゃんの人生も台無しにされたわけだから申し訳ないなと思って、残された辻ちゃんの方を全力で応援しようと思っていたら、その2ヶ月後にできちゃった結婚で。ここで全部終了ですよ。06年、07年、あそこは40何年生きてきた中で一番の地獄でした。

ここまでのトラブルって日本のアイドル史に無いんじゃないですかね? そういった意味ではやっぱ加護ちゃんは凄かったなと今でも思ってますけど(笑)。


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