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第5回:ジェリーさん編

連載
アイドルのいる暮らし
公開
2012/09/24   14:30
更新
2012/09/24   14:30
テキスト
文/岡田康宏(サポティスタ)


平日のライブ会場やショッピングモールで行われるイベントで、いつも見かける大人の姿がある。けっこういい歳してるけど、この人たちはいったいどんな生活をしているのだろう?

大人のアイドルファンは、アイドルファンであるだけではなく日常を生きる社会人でもある。お金も暇もある大人のオタクには、元気なだけの若者にはない深みと趣きがある。ライフスタイルとしての現場系アイドルファン、大人のオタクの遊び方とは?



今回お話を伺ったのは、ジェリーさんだ。関西在住、30代後半の女性で一度の離婚経験がある。中学生のころ光GENJIにハマったのをきっかけにジャニーズファンとなり、現在は嵐・二宮和也担当。代理店勤務で多忙な毎日を送りながらも、嵐、Sexy Zoneを追いかけて全国のツアーを回る。「会えるアイドル」が全盛となった今も手の届かない存在として圧倒的な人気を誇るジャニーズの魅力とはどこにあるのか。



当時の中学生にとって「かっこいいものがすべて詰まった7人」



ジャニーズが好きになったのは中学2年生の夏、光GENJIがきっかけです。それまでは普通にテレビを見て、CDや雑誌を買ったりはするものの、そんなにハマることはなかったんですよ。当時、当たり前のように買っていた「Myojo」で光GENJIがデビューしますっていう告知を偶然見つけたんです。半ページにも満たない小さい記事だったんですけど、どこどこでデビューイベントやりますっていう告知が載っていて。当時の中学生にとっては「かっこいいものがすべて詰まった7人」にみえました。夢中にならざるを得ない何かを感じたんです。当時も今もアイドルに求めるものは「他では味わえない圧倒的な感情の爆発をもたらせてくれる瞬間」です。

それを見て好きになったのがきっかけなので、デビューと本当に同時でした。世間で話題になるよりもファンになったのは早かったです。テレビ初登場、初イベント、初コンサート、すべてを見てきました。ただ当時は、兵庫のど田舎に住んでいたのでコンサートツアーがあっても大阪の一公演に行くのが精一杯でした。光GENJIのときはずっとそうで、一ツアー、一公演だけ行くみたいな。中学生のお小遣いではそこが限界です。

光GENJIの人気が一番ピークを迎えたのは、わたしが中3のとき「パラダイス銀河」の頃です。それを契機に人気が右肩下がりになっているのは中学生ながらも感じていました。だけど、世間的な評価と自分の価値観は全然リンクしていないというか、それが嫌でもなかった時期なので、ファンが周りでどんどん減っていくなとは思いながら、高校2年までは普通に好きでいました。最初はクラスの女の子の8割がファンだったのが、6割になり、4割になり、2割になり、最後はわたしともう一人になり。でもゼロにはならなかったので、ファンを続けている間は、その子と一緒に応援していましたね。

高校2年のときにふと、本当に飽きてしまって「辞めます」って友だちに言いました。そうしたら友だちが「私も辞めたかった」って(笑)。お互いに妙な連帯感があったみたいで。それで2人が辞めたので、その学年で光GENJIのファンは壊滅してしまいました。それが世の中の流れだったんだろうなと。光GENJIの中で誰が好きなのと言われると佐藤敦啓くんと答えていたんですけど、特別に彼だけが好きだったわけではなくグループが好きだったので。今の私の感覚だとNEWSが近くて、グループとして好きだけど、誰か一人を好きかと言われると強いて言えば、というだけで。グループ担とか、ユニット担(※1)とか言われる部類ですね。
*注*1 グループ担とか、ユニット担・・女性アイドルファン用語で言うところの「箱推し」。



嵐というグループの中にいる二宮くんが好きですね



私は短大に行ってから大学に入り直しているんですけど、光GENJIを卒業してからは周りの影響もあり、洋楽を中心とした音楽が好きになっていて、そっち側に傾倒していたんですよ。ただ、その頃はジャニーズJr.の黄金期といわれる時期で、ジャニーズJr.の番組もいくつかあり、時間が合えば見ていたし、SMAPも上り坂になってきた時期なので、同じように見ていました。特別好きなわけではなく、ただやっているから見ていたという感じですね。98年に二宮くんが頭を丸坊主にして「天城越え」というドラマに出たんですけど、それも丸坊主にする記者会見まで見ているんですよ。だから、今思うと無意識にジャニーズを選んで見ていたんだなと思います。

02年に「木更津キャッツアイ」があって、それを見て嵐に興味がわくんですけど、このときは結婚していて、旦那さんと一緒に見ていました。ただ、そのときは2人ともゲスト出演した氣志團に興味があったのでちょっと見てみました、という程度です。当時、東京スカパラダイスオーケストラとかブランキー・ジェット・シティとか、結構、激しい系の音楽が夫婦二人の共通の趣味でライブハウスに通っていたので。

でも、主役はジャニーズの子たち。自分は昔からジャニーズを見てきていたので、嵐はもちろん知っていたし、旦那も主題歌になっていた「a Day in Our Life」を聞いて「嵐っていいよね」って感じになって、それ以降、違和感なく家庭の中に嵐が入り込んできました。03年に嵐の主演ドラマが次々と放映されていく中で、それを全部見ていて、気がつけば、その中でニノのドラマを一番はまって見ている自分に気がついて「私、二宮くんが好きだわ」って。

決定的になったのが「青の炎」という映画なんです。その映画をDVDで家で一人で見たときに、なぜかわからないけどリピートが止まらなくて、で、ずっと泣いているんですよ。毎晩、毎晩、一週間くらい。旦那にいい加減にしろって言われるくらいに見続けて、あるときから今度は、全く見られなくなってしまったんです。何か惹きつけるものがニノの演技にあって、それは何度繰り返し見ても涙が出るし、ぎゅっとくるし。でもそれがあまりに辛すぎて一度見るのを止めてしまったら、いまだに見られなくて。そのくらい傷跡深く自分の中に残っているんですよ。だから、この子は自分の中では特別な子なんだな、というのがこの映画で刻み込まれて。そこからずっとニノが好きで、でもニノが二宮和也単独だったらそこまで興味はなくて、嵐にいるから大好き。嵐というグループの中での二宮くんが好きですね。

嵐のコンサートは03-04年の冬のツアーから行き始めました。最初、ゆるく好きなうちはライブに行かなくても良かったんですけど「青の炎」がきっかけで実在を確認したくなって(笑)。当時はまだイベントはZeppだったし、03年の夏の段階ではたまアリ(さいたまスーパーアリーナ)がガラガラだったんですよ。そのくらいの人気だったけれど、当時からコンサートの内容はおもしろいって言われていて。03年から04年にかけての冬のツアーはファンの間で嵐の黒歴史って言われている、あまり評判の良くないコンサートだったんですけど、私はそれを初めて見に行って感動しました。嵐にハマる要素はあったんだなと。そこからはコンサートは毎回、行っていますね。

基本的には現場に行ってなんぼです。現場に行って自分の目で見て感じることというのは、他の人のレポを読んだだけではわからないことがいっぱいあるし、パッケージ化されたDVDを見ても絶対に違うんですよ。その会場のその位置から見ていた私の視線というのは、私が体感したことであり、私がその空間にいた記憶になるわけじゃないですか。それがあるから自分の中の愛情が深まっていくのかなと。DVDで見ても疑似体験にしかならないじゃないですか。映像作品はそのカメラマンさんが切り取ったおもしろいところだけど、私は私が現場で見たおもしろいところを見ているし、それを記憶しているので。その感覚は人から与えられるものではなくて、自分でそれを取りに行かないとダメなのかなと。だから現場主義ですね。そうしないと自分の中で愛が育っていかないと思っています。



私にはもうファンサはないなと思って諦めています



私は1回だけ、奇跡の1回なんですけど、コンサート中にニノから話しかけられて会話をしたことがあるんですよ。MCがはじまったときに、向こうからは見えてないと思っていたので、タオルを取り出してがーって汗を拭いて、うちわで仰いで水を飲んでいたら、つかつかつかってニノが歩いて来て「そんなに暑いの?」って。で「暑いです」って答えたら「暑いよね」って。

07年のTimeコンツアーの京セラドームですね。ドームって広いじゃないですか。そんなことありえないって思うじゃないですか。ところが嵐のコンサートは真ん中に大きなムービングステージがあって、その周囲はわりと近いんですよ。MCのとき、ニノちゃんは足をプランプランさせたいから、そのヘリに来て座るんですよ。ちょうどそのヘリのところに私がいて。07年からずっとドームに行っていますけれど、そんな経験は一度きりですし、私がアリーナのそんないい席に入れたのも、そのときともう一回くらいだし、もう一回のときはファンサ(※2)ももらえてないですから。だから、あのときが奇跡の一回だったんですね。
*注*2 ファンサ:ファンサービス・・メンバーが自分に何かの反応をくれること。コンサートではうちわに反応して手を振ってくれたり、投げキスしてくれたり。嵐では大野くんが釣ってくれることもあります。

それでもう十分。もう、こんなことはないと思っています。ファンサの話って人から聞くと自分もすごく欲しくなりません? だって同じチケット代を払って、この子はこんなにおいしい思いをして、自分は何もなかったよとなったら、いろいろとあるじゃないですか。だからツイッターとかでは絶対にそういうファンサに関しては書かないようにしようと決めていて。自慢じゃなくて、ただ単純にこんなことしてもらったよという報告のつもりで書いたとしても、それを読んだ人が過剰に反応してしまったりということがあるので。だからファンサはあまり求めないようにしようと思っているし。誰がどんなファンサをされたかとか、それを言い出すとコンサートは楽しいのにその空気が楽しくなくなってしまうので。そんなんで友達なくした子、何人も見ていますから。それは嫌だなと思って。ジャニーズのファンってそういうところ、気を使う人が多いんですけど、男性のアイドルファンのレポを読むと、自分がどんなおいしい思いをしたか結構普通に書いてあって、そこは男女の違いなのかなって思いますね。