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VOLTA MASTERS

連載
360°
公開
2010/04/01   20:50
更新
2010/04/01   20:53
ソース
bounce 319号 (2010年3月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次

 

VOLTA MASTERSって何だ?

 

 

ケイト・ブッシュの“Wuthering Heights”。葉加瀬太郎の“Etupirka”。井上あずみの“めぐる季節”。ジョージ・ウィンストンの“Longing/Love”──いきなりそう書き出しても、何の話だよ?と思われるかもしれません。じゃあ、「恋のから騒ぎ」「情熱大陸」「魔女の宅急便」〈箱根彫刻の森美術館のTVCM〉それぞれのテーマ曲、と書けばどうでしょう。一概には言えませんが、多くの人が〈ああ、あの曲ね〉と脳裏に鳴らすことができるのではないでしょうか。さらに〈G線上のアリア〉は? 「スーパーマリオブラザーズ」は? マイケル・ジャクソンの“Rock With You”は? これはすべてVOLTA MASTERSのニュー・アルバム『Lovers』に収められた楽曲の元ネタになっている曲です。このようにリスナー側の既聴感を拠り所にするという、ありそうでなかったスタイルで躍進してきたのがVOLTA MASTERSなのです。

そもそもヒップホップのサンプリング・ワークは、既存のレコードからドラムなどの格好良いブレイク(ブレイクビーツ)を抜き出し、それを繋げて永続的なループ・トラックにしたところから始まっています。そこから時代を経て、サンプリングした音を刻んだり加工したりして原曲の姿とはまた別のビートを作り出す職人たちが現れ、一方ではよりメジャーな曲を原型を残しながら引用するという人たちも登場してきました。現在はその両面を併せ持つ作り手が多いようですが、VOLTA MASTERSは早くから大ネタ使いを多用したリスニング志向の強い作風を貫き、楽曲そのもののツカミの強さで多くの耳を確実にキャッチしてきました。確かに賛否両論はあるはず。ただ、例えばTVを観ない人が件の曲を聴けば単に〈ケイト・ブッシュ使いの曲〉という印象を抱くでしょうし、それはいま世にある多くのサンプリング曲やカヴァー、リメイクと何ら変わりない(リスナー個々の知識に印象が委ねられる)ことになります。いずれにせよ、完全なオリジナル曲も多い今回の『Lovers』は彼がここ数年取り組んできたことの集大成と言えましょう。

MONDAY満ちるの歌う“Justin'Love”を筆頭に、黒石芽生やモデルの紗羅マリーら多くのシンガー/ラッパーを配した今作ですが、ポイントはその“Justin'Love”にも感じられる90年代R&Bへのオマージュ的な側面でしょうか。浦嶋りんことトライベッカが絡む“Rock With You”はマイケルというよりもブランディ&ヘヴィD版のカヴァーですし、日本発のUKソウルとして人気を博したエリーシャ・ラヴァーン、かつてジャム&ルイスが送り出したラジャ・ネーらの起用もそこでの曲調も、〈あの雰囲気〉に親しんできた者としては実にくすぐられるものがあって……と書いても知らない人にはわからないことでしょうが、つまりはそういうことです。記憶に結び付くことでどう感じるのか、知ってる曲だけ聴きたいのか、知らなければ気にならないのか、それを気にする前に素直に心地良さを感じるのか、すべてはリスナーに委ねられているのです。

 

▼『Lovers』収録曲のネタ元を収めた作品を一部紹介。

左から、ケイト・ブッシュの78年作『The Kick Inside』(EMI)、ジョージ・ウィンストンの80年作『Autumn』(Windham Hill)、葉加瀬太郎のベスト盤『The Best Track』(エピック)、〈マリオ〉シリーズの名曲を集めたコンピ『ファミコン サウンドヒストリーシリーズ「マリオ ザ ミュージック」』(サイトロン)、井上あずみ“めぐる季節”を収めた編集盤『宮崎アニメ The BEST』(徳間ジャパン)、マイケル・ジャクソンの79年作『Off The Wall』(Epic)

 

▼『Lovers』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

左から、MONDAY満ちるの2008年作『NEXUS』(ポニーキャニオン)、黒石芽生をフィーチャーしたカヴァー集『Spring Bonanza ~Sakura Uta~』(Revolution)、4月7日にリリースされる紗羅マリーのデビュー・シングル『Cherry/Gossip』(avex trax)、浦嶋りんこの2004年作『抱擁』(WOMANIC)、エリーシャ・ラヴァーンのベスト盤『Greatest Hits & Remixes』(Brownsugar)、ラジャ・ネーの“Turn It Up”を収録したコンピ『90'S R&B FLAVA』(ユニバーサル)

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