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I ヘヴィー・メタルの成り立ちと特徴
今回のお題はヘヴィー・メタル(以下HM)だ。押さえなきゃいけないトピックがたっぷりあるから、さっそく授業を始めるぞ! まずは歴史の話から。HMのスタート地点をどこに置くかは、クリームの『Disraeli Gears』(67年)やジェフ・ベック・グループ『Truth』(68年)といったブルース・ロック作品、あるいはビートルズ“Helter Skelter”(68年)など諸説ある。ただ、以降のシーン形成にもっとも直接的な影響を与えたのは、これもブルース・ロックの文脈から登場したレッド・ツェッペリンと言い切って間違いないだろう。高音でシャウトするヴォーカルにザクザクとリフを刻むギター、重たいベース、爆音のドラムという彼らのスタイルがHMの雛型となったのである。せっかくだからHMというジャンル名の由来についても触れておこうか。これにも諸説あるが、有力なのはCream誌のライターがツェッペリンを表現する際に用いた〈Heavy Metal Kid〉なる形容と、ステッペンウルフ“Born To Be Wild”(68年)の歌詞に出てくるバイクを指した言葉〈Heavy Metal Thunder〉の2説だね。難関校をめざすならこのあたりのポイントはしっかりチェックしておくように!
ともかく、そうやって形成されていったHMだが、60年代末~70年代初頭の黎明期にはハード・ロックとほぼイコールで語られていたんだ。それが徐々に、より鋭利なリフや速いドラムを特徴とする〈重金属的なロック〉を、いつしかHMとして線引きするようになっていったわけだ。ちなみに日本では、79年に勃発するニューウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィー・メタル(NWOBHM)以降にHMの呼称が広まったから、それ以前のものをハード・ロックとして語ることも多いんだぞ。もっと明確な区切り方はないのかって!? なかなか良い質問だ。実際に身体で聴いてみるとわかると思うが、ハード・ロックには腰を揺らすグルーヴがあるのに対し、HMは横のノリが薄い。だからライヴ会場ではオーディエンスが首を振りまくっているんだよ。
ということで、次はお待ちかねの実践編だ。今回はNWOBHMによってHMの様式美が完成されるまでの作品をメインに紹介するから、休み時間中にしっかり首をほぐしておけよ!